全日本食品(全日食)は、主要食品メーカー向けに提供するPOSデータ分析プラットフォームにビジネスインテリジェンス(BI)基盤を採用、これまでのPOSデータに加えて新たに分析機能を2014年7月から提供している。製品を提供したアシストとクリックテック・ジャパンが6月1日、発表した。
全日食は、小売主催として日本最大のボランタリーチェーン(複数の独立小売事業者が商標使用や仕入・物流などを共同化して運営する形態)「全日食チェーン」の本部として、約1800の加盟店と提携チェーンへの商品の提供、各店舗の売り場商品管理と運営、経営に関わる指導や支援、POSや発注機の機器提供などを実施している。
同社では2010年9月、顧客の購買履歴に応じた販売促進サービス「ZFSP(Zen-Nisshoku Frequent Shoppers Program)」を開始した。ZFSPは、顧客が小売店で全日食メンバーズカードを提示するとレジで自動値引やポイント付与を受けられたり、店舗に設置されている端末にカードを差し込むと、1人ひとりにカスタマイズされた特売チラシや割引クーポンが発行されたりするサービスで、現在全国550店舗で150万人(実稼働)の顧客に向けて展開されている。
このZFSPのデータは小売店だけでなく、全日食が主催する研究会の参加メーカーにも提供され、新商品の紹介やアンケートの実施などのダイレクトマーケティングに活用できる。だが、データがCSVファイルで提供されるため、メーカー側が分析に十分に生かしきれないという課題があった。
そこで全日食では、データのみではなく、新たに分析環境を含めて提供できるよう、研究会における標準BIプラットフォームの導入を決定した。
BIプラットフォームは、コスト、レスポンス、使いやすさ、汎用性の4点を要件として選定し、クリックテックのインメモリBI基盤「QlikView」を採用することになった。
採用に至った理由は以下の通り。
- 全日食メンバーズカードのレシートデータという、膨大な量のデータをフル活用するための分析基盤を構築できるプラットフォームである
- 研究会に参加しているメーカーは、QlikViewの特徴である連想技術により、QlikView上に展開されたレシートデータから、顧客の購買行動や同時購入品、食品業界のトレンドなどを他社商品も含めて明細レベルで分析し、現状を把握することが可能である
- QlikViewは容易に、また短時間でデータを分析できるため、研究会メンバーが分析を日常的に積み重ねることができ、顧客行動の変化にすぐに気づくことができ、迅速に次のマーケティング施策を展開できる
- 堅牢かつ詳細レベルまで設定できるセキュリティ機能を実装しており、社外ユーザーへの公開要件を満たしている
- 全日食は、リアルタイムなデータ分析をもとにメーカーと共同での商品開発や販促企画の立案を促進でき、自社サービスの付加価値として提供していくことができる
なお、今回の導入に際して、アシストではQlikView分析画面の開発支援や、ZFSP研究会のリリースに向けたパフォーマンス調査、改善支援などを実施した。分析プラットフォームは、2014年7月より研究会に参加している主要食品メーカー約60社向けに公開され、全日食では各メーカーにおける以下のような効果を期待しているという。
- 全日食が設定した分析軸やデータをそのまま利用できるため、分析ノウハウの共有や高品質な分析が可能となる
- 各メーカーごとに、必要に応じたレシートデータの抽出や、切り口別分析が簡単にできる
- 操作が容易なため、データサイエンティストの人材不足を補完できる
現在では、従来のCSVデータ提供だけでは実現できなかった顧客ID付レシートデータの積極的な活用をメーカー各社が行っており、研究会への参加企業増加に伴い本プラットフォームの利用企業も増大している。
全日食では今後、小売店とメーカーへのデータの提供に加え、全国のマーチャンダイザーやスーパーバイザーにも、QlikViewを採用することを検討している。
これに先立ってマーケティング本部でもQlikViewの活用が進んでおり、半日かかった分析が数分で対応出来るなど「データ分析業務の効率化を実現できた」との声が寄せられているとアピールしている。