現在の為替水準(1ドル124円前後)が今後1年続くならば、日本企業の今期業績はかなり上ぶれが見込まれる。5月24日週は円安進行にともない、企業業績の上ぶれ期待から日経平均がじりじりと上昇した。
しかし、楽天証券経済研究所のチーフストラテジスト窪田真之氏は、そろそろ円安が行き過ぎの可能性もあると考えているという。短期的に円高(ドル安)へ反転する可能性も頭に置いておいておくべきだ。
ドル金利の先高感は低下しつつある
アメリカで今年利上げが実施される見込みであることが、これまでドル高(円安)が続いてきた最大の理由だ。日本が異次元金融緩和を続ける中で、アメリカが利上げすれば、ドル高(円安)がさらに進むと考えるのが普通だった。
実際、米FRBイエレン議長が5月22日の講演で「年内のある時期に利上げが適当」と述べると、ドル高(円安)が加速した。
ドル円為替レート推移:2015年1月1日~5月31日

(出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)
2015年に入って、以下の2つの要因から、ドルの上値は重くなっていた。
- 1~3月の米景気が失速(1~3月GDPは前期比年率マイナス0.7%)
- 原油価格急落によってアメリカのインフレ率が低下(4月は前年比マイナス0.2%)
日米の消費者物価指数(エネルギーを含む総合指数)の前年比騰落率:2014年1月~2015年4月

(注)日本については、2014年4月の消費増税の影響を除く実質で表示。 (出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)
その結果、ドル金利の先高感は低下し、「アメリカの早期利上げはない」との見方が広がりつつあった。
ところが、ハト派(利上げに慎重)と見られて来たイエレン議長があえて「年内の利上げが適当」と発言したため、急きょドル金利の先高感が復活し、ドルが急伸している。
ただし、イエレン発言の中身を細かく吟味すると、イエレン議長が米景気の先行きに明確に強気であるわけでないことがわかる。年内に利上げが適当となるのは、「期待通りに米景気が改善した場合」と条件つきであるとした上で、わざわざ「経済見通しは高度に不安定で、(米景気が回復に向かうという)私の予測はよく大きく間違える」とまで述べている。イエレンの利上げ予告と解釈するのは、やや早計かもしれない。
確かに、これだけ何回も年内利上げを示唆し続けているので、年内利上げの確率は高いと考えられる。ただし、利上げ幅は小さく、しかも利上げは1~2回で打ち止めかもしれない。今、進んでいるドル高を正当化できるほどのドル金利上昇は実現しないと考えられる。