人工知能が、人間の味覚の好みに応じてレシピを考案する取り組みも始まっている。IBMの人工知能「Watson」は、利用者が好みの食材や調理法を入力すると、100種類のオリジナルレシピを提案する「Chef Watson」を展開しており、4月には、米国でレシピ本「Cognitive Cooking」も発売されている。
出所:IBM ホームページ
冷蔵庫にある商材、本人の味覚の好み、本人のウェアラブルデバイスで管理している健康状態などをもとに、Chef Watsonが最適なレシピを提案し、3Dフードプリンタで食材をつくるといったように、個人に合わせた新しい味の組み合わせを創造する動きも進んでいくかもしれない。
嗅覚を新たな誘導ツールに
「匂い」で目を覚ましてくれる目覚まし時計「SensorWake」の開発が進められている。実際に100人以上でテストを行ったところ、99%の人が匂いで2分以内に起きることができたという。匂いの種類は、エスプレッソと温かいクロワッサン、甘い桃とイチゴのキャンディなどの6種類が利用でき、カプセルは60回利用できる。
出所:SensorWake http://sensorwake.com/
匂いによるアプローチは目覚まし時計だけでなく、例えばケーキ屋や焼肉屋といったように、嗅覚を刺激し店舗に誘導するなど販促につなげていくといったアプローチも考えられるだろう。
五感を刺激、拡張するサービスと可能性
これまで紹介してきたように、触覚や視覚、聴覚、味覚、嗅覚の五感を刺激する斬新なサービスが登場し始めている。五感から生成される情報をコンテンツとしてとらえ、拡張や機能を支援するサービスが人間の行動範囲や思考範囲を広げ、生活スタイルやビジネスのスタイルを大きく変化させていく可能性を秘めている。
事業者にとっても既存の枠を超え、五感を組み合わせた新たなビジネスを創造する大きな機会ととらえることができるだろう。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開 発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。