日本取引所グループは、OTC(Over The Counter:店頭取引)デリバティブ商品の清算システムにおける証拠金シミュレーション機能を拡充した。これまでは前日までのデータを用いていたのに対し、新たにリアルタイムデータ統合製品を用いて最新の情報を用いたシミュレーションを可能にしたという。製品を提供した日本オラクルが6月4日、発表した。
日本取引所グループは、アジア最大規模の金融商品市場インフラストラクチャを提供する持株会社で、東京証券取引所、大阪取引所、日本取引所自主規制法人、日本証券クリアリング機構の4社から構成される。
その中期経営計画における重要戦略の1つには「取引所ビジネス領域の拡大」を掲げており、OTCの清算ビジネスの強化を軸に、最新のITを活用しながら収入源の多角化に取り組んでいる。
グループの一員である日本証券クリアリング機構が運用するOTC清算システムでは、取引にあたり証拠金を事前に預託する必要があるため、清算に参加する大手金融機関や証券会社などに提供している証拠金のシミュレーション機能の精度を高め、その利用率を向上させる必要があった。
従来の証拠金シミュレーション機能で使用していた金利情報やポジション情報は、日次のバッチ処理により基幹データベースからシミュレーション用データベースに複製された前日のデータだったため、精度の高い金額が算出できない点が課題となっていた。
既存システムでは、基幹システムに影響を及ぼさぬよう、基幹データベースからシミュレーション用のデータベースに片方向データ送信を行っていた。
今回、この構成を変えることなく、シミュレーションに使用するデータの鮮度を高めながらセキュリティも担保する方法を模索した結果、2台のデータベース間でほぼリアルタイムのデータ同期ができるオラクルのリアルタイムデータ統合製品「Oracle GoldenGate」の導入を決定。
これにより、最新の情報に基づいた証拠金のシミュレーションにより大幅な精度向上が実現し、金融機関や証券会社がそれまで余分に準備していた証拠金を運用などに回すことが可能になった。その結果、ユーザーからの評価向上につながり、日本取引所グループによるとシステムへのアクセス数は従来の10倍に増加したという。
日本取引所グループ 東京証券取引所 IT開発部 課長の箕輪郁雄氏は、以下のようにコメントしている。
「中期経営計画の重点課題の1つであるOTC清算ビジネスの拡大に向け、Oracle GoldenGateを導入してOTC清算システムの証拠金シミュレーション機能を拡充しました。データベース間のリアルタイム連携により、参照する金利情報やポジション情報の鮮度が飛躍的に向上したことで、清算参加者がより精緻な情報をタイムリーに取得し、業務オペレーションの短縮化、低コスト化を実現し、競合に対する優位性も得られています」