未来へのビジョンを売る--セールスフォースの小出CEO - (page 2)

吉澤亨史 怒賀新也 (編集部) 山田竜司 (編集部) 2015年06月11日 06時30分

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――環境の変化に対し、セールスフォースが取り組んできたこととは。

 10~15年前を振り返ってみると、セールスフォースはクラウド事業の中でイノベーションを起こしながら新しい市場を開拓してきた、パイオニアであると思います。ただ、現在はさまざまな競合他社も参入しています。たとえば、インターネットで「ソリューションカンパニー」と検索すると、日本だけでも何万社という結果が出てきます。

 顧客の経営課題を聞き取って、解決策を提示するのがソリューションベースのアプローチだと思うのですが、それはすでに何万社もいるわけです。クラウド業者も一緒ですよね。でも、われわれはソリューションアプローチ型からビジョンセリング型にアプローチを変えたいと考えています。「過去の経験が生きない世界」になったためです。

 ビジョンセリングとは、たとえば自動車業界では「良い車を作れば売れる」という考え方で開発、販売をしています。しかし、今後は「良い車」の定義が変わってくるかも知れません。今はIoTとして常時インターネットに接続し無数のセンサを搭載した「コネクテッドカー」や、自動車などに通信システムを組み合わせて情報サービスを提供する「テレマティクス」など、車と何かをつなげていろいろなことを実現しようとしています。でも、本当は車と人をつなげる方法を考えなくてはいけないのです。

 そう考えると、車に乗っている空間や時間においてドライバーや乗車している人が何を望んでいるのか、情報が集まれば「良い車」の定義が変わると思います。IoTはあくまで手段であり、目的は自動運転や安く購入できるお店や充電ステーションを知ることなどですよね。現時点のテクノロジやリソースだけを議論していると、単に性能の良い車で終わってしまいます。

 さらに、自動車メーカーが10年後、15年後を考えたときに、現在の延長線上ではない「何を作りたいか」「何になりたいか」「何をすべきか」を想定すべきです。そうすると、ユーザーの考えにまで踏み込まないと、本来のつながる意味が失せてしまいます。われわれは、そこまで踏み込んだビジョンを顧客と作り、それを実現して顧客の成功を導きたい。それがビジョンセリングです。これはどの業界でも同じです。

 顧客の経営課題を解決するパートナーはたくさんいますから、われわれは「顧客のやりたいこと」を実現します。「顧客が何をしたいのか」を、一緒にビジョンを作って実現していく戦略的なパートナーになれるかが鍵です。米国で"モストイノベーティブカンパニー”という評価を14年受けてきた流れで言えば、私たちも進化していかないといけません。ここ一年はトレーニングを実施して、社員のクォリティを上げることにも取り組んでいます。

――革新的でありつづけるための教育や指導とは。

 まずトレーニング以前に、クオリティの高い採用をしなければなりません。セールスフォースではこれまで、新卒の採用をしていませんでした。中途採用者が持つ文化とセールスフォースのDNAを混ぜ合わせ、良い意味での化学反応をさせたいというのが1つの狙いでした。成功すれば、爆発力を持つエネルギーを生み出せます。方程式が間違っていると自爆してしまうので、われわれはトレーニングをしながら化学反応のための正しい方程式を作ることを考えています。

 それとは別に、過去にとらわれず、クリエイティブに動ける人材も欲しいので、血を入れ替える意味で初めて新卒を採用することになりました。今回は私が入社した2014年4月以降に募集を始めたので、4人しか採用できませんでした。2016年度は20人規模で採用したいと考えています。

 具体的な教育や指導は、セールスフォースの世界規模でのブートキャンプに日本からも参加させています。そこで世界で成功している売り方や、ビジョンセリングに必要なプロセス作りとそのシェア方法、相手の企業のエグゼクティブとの接し方なども学びます。

 ビジョンを売るための方法論(メソトロジー)は、セールスフォースが世界共通で明確にプロセス化しています。プロセスに則っていけば、基本的な答えが出るよう作り込まれています。ただし、これは例えばGeneral Electric(GE)やGeneral Motors(GM)、Coca-Colaなどの超大手向けです。一方で、中小企業向けのプロセスも確立しています。こちらはビジョンセリングではなく、キャンペーンやテレセールスなどが中心になります。こういったメソトロジーは、常に世界中の成功例を反映してアップデートされています。先ほど申し上げた化学反応のための方程式も含まれます。

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