情報通信技術の新たな使い方

情報通信技術が発達すると「アービトラージ」が進む - (page 2)

菊地泰敏(ローランド・ベルガー)

2015-06-09 07:30

 そして、また1つ、アービトラージのネタになるものが出てきた。電力である。

 電力事業の自由化については、ご存知のことと思われる。現在、各地域において電力事業者が(ほぼ)独占している、発電、送配電、小売について参入規制を緩和し、競争原理を働かせようというもくろみである。

 ただし、送配電については、そのネットワーク(送電線・配電網)を整備するには莫大な投資が必要なことと、複数事業者が送配電網を整備することは経済合理性がないということで、独占を認める代わりに、各発電、小売事業者に対して同一条件で貸し出すという規制を設けることで落ち着いた。

 さて、そうなると小売事業者は、可能な限り低コスト(低価格)な、電力を仕入れることが競争優位性の源泉になる。

 また、発電も自由化される。火力、水力、太陽光、風力、地熱、そして原子力も、なるべく低コストで発電し、小売事業者に販売することが求められる。当然のことながら、それぞれの発電種別において、そのコスト(円/kWh)は異なる。

 電力の需要は真夏のお昼過ぎをピークに、季節や曜日、時間帯などさまざまな要素で変動する。この変動を見据えて、トレーディングが起こるのである。

 現在であれば、夏の電力需要ピークを乗り切るために、東京電力が中部電力に余剰電力を融通するというレベルの話であるが、将来的にはリアルタイムでのトレーディング、すなわちそれによるアービトラージが現実化するといわれている。

 リアルタイムでのトレーディングが現実化するためには、流量のモニタリング、コスト計算、送配電網の空きキャパシティ管理などがリアルタイムで実行できる必要があるが、スマートメータをはじめとするさまざまな技術開発、製品開発が進められており、現実化への障壁は日々下がっているといって差し支えないだろう。

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