中国ビジネス四方山話

独自通信技術で脱西側ネットワークを進める中国

山谷剛史 2015年06月09日 06時00分

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 中国がATMなど銀行のIT機器に関して技術情報の開示や中国国内の技術を採用することを求めていると報じられた。一方で中国では、中国が国産で独自技術が入ったATMを開発した、というニュースも報じられた。また先月末には、名門大学の清華大学らが開発したATM「TK-77」が公開された。報道によると「中国製チップが搭載してあり、顔識別機能を搭載するほか、銀行や公安のネットワークとも繋がっていて、ATMを利用した犯罪にストップをかける。またプラスチック製の紙幣を含む、外国の紙幣の識別機能や、ニセ札判別機能があり、処理速度においても外国産ATMより20%高速」という。

 以前は、ITに関する中国の独自技術といえば、「EVD」などの光学ディスクや「龍芯」などのチップなどがあった。これらの目的は中国が量産するだけで儲けることができない現状から、特許を持つことで、多くの金が落ちるようにしようということだった。現在iPhoneが世界的ヒットを飛ばす中、販売1台につき中国に落ちるお金の低さを嘆く現状から見ても、また中国で最も頑張っているCPUメーカーの「瑞芯微(Rockchip)」すらARMによるライセンス製品であることから見ても、この目論見が達成するまでの道は遠い。

 このように、当初の中国の独自技術は世界の工場からの脱却を目標にしていた(そのように中国メディアは報じていた)が、最近の独自技術のベクトルを見ると、通信系技術に関する情報が多い。世界的なITトレンドがスタンドアロンのサービスから、クラウドサービスになったからというのもあるが、もう1つに、米国発の通信規格からの脱却が夢物語ではなくなったからというのもあろう。

 たとえばWPAやIEEE 802.11iに対抗した無線LANセキュリティ規格の「WAPI」、DLNAに対抗したホームネットワーク規格の「IGRS(閃聯)」、GPSの中国版「北斗」、W-CDMAやCDMA 2000に対抗した3G方式の「TD-SCDMA」、FDD-LTEに対抗した4G方式の「TD-LTE」が挙げられる。これらの共通目標をあげれば、「シリコンバレー発のネットワークからの脱却」、ないしはもう少し広く「外国ネットワークからの脱却」と言えるのではないだろうか。

 シリコンバレー発のネットワークからの脱却でいえば、中国政府内でのクラウドを利用するiPhoneやWindows 8の利用禁止という話題もあった。中国のインターネット立ち上げ時期である1990年代後半に、江沢民氏の息子である江綿恒氏が、中国が国単位のインターネットを作るべきと提唱していたが、近年エドワード・スノーデン氏の告発により、米国国家安全保障局(NSA)がネット監視を行っていたことが明らかになったことで、ますます世界の情報は米国らに掌握されているという認識が強まった。冒頭に書いた中国産ATMの開発についても、「自分の国の情報は自分で守る」という意識があったのではないだろうか。

 自国でコントロールできるインターネットの構築が目標なら、他の規格が中国でシェアナンバー1をとれるとは考えにくい。

 たとえば4Gの方式であるTDD-FDDがそうだ。中国は2008年の北京オリンピック開催のタイミングに合わせた、TD-SCDMAのスタートアップにおいて失敗した。W-CDMAやCDMA 2000をスタートさせず、TD-SCDMAのみにライセンスを与え優位性を与えたにも関わらず、まだスマートフォンは普及してなく、魅力的な外国メーカーの端末はW-CDMAやCDMA 2000用のみだったことから、同方式の本格的な普及まで5年近くかかった。サムスンやアップルがTD-SCDMA用の端末を出し、(中国人にとって)それに負けない魅力の中国メーカーの小米(Xiaomi)や華為(Huawei)や聯想(Lenovo)が台頭し、キャリアの中国移動(China Mobile)が2Gから3Gへの低価格な乗り換えキャンペーンを行ってようやく本格的な普及がはじまった。

 4Gはこの失敗から、さらに大きく万全な優位性をTD-LTEに与えた。2013年12月、中国工業和信息化部はTD-LTEのライセンスを中国移動と、中国聯通(ChinaUnicom)と中国電信(ChinaTelecom)のキャリア3社に与えた。一方世界で主流のFDD-LTEのライセンスは、出る出ると報じられながら、結局出たのは今年2月末のこと。TD-LTEは理論値100Mbps、FDD-LTEは同150Mbpsで、中国移動は前者のみで、中国聯通と中国電信は両方の方式でサービスを提供しているが、後者を本命視していた。ところが、いつになってもFDD-LTEのライセンスが発行されないことから、4Gに関しては、4Gの契約数1億8000万のうち、9割以上が中国移動のTD-LTE方式のものとなってしまった。FDD-LTEが中国で普及するというストーリーは考えにくい。

 中国聯通と中国電信は、TD-LTEとFDD-LTEのライセンスがあり、この2方式を融合して260Mbpsの速度を実現するという話も出ている。仮に出たとしてもどこまで普及するか怪しい。FDD-LTEが入っていることで、外国に情報が漏えいしないという確証があるなら、中国政府は普及を許すかもしれない。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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