群馬県 健康福祉部 医療介護局 医務課では、救急、災害医療を支援する「統合型医療情報システム」を補完し、全国の事例を参照したベストプラクティスを実現させる目的で、タブレット端末を新たに導入した。日本マイクロソフトが6月8日、ユーザー事例として公表した。
群馬県では、1980年から「広域災害、救急医療情報システム」を運用している。システムは改修を重ねながら機能を向上しており、2013年1月には初のタブレット端末を導入した。
当時は、県内11消防本部で保有する全救急車に配備し、救急車内で病院側が事前に登録した情報を基にした受け入れ病院の検索などに活用されていた。
しかし、情報を登録する医療機関の側では有線LANに接続された端末しか用意されておらず、救急現場から病院側の状況を確認したり、患者の容態などを伝えるには、電話で個別に対応するしかなかったという。
こうした課題を解決するため、県では2014年末に広域災害・救急医療情報システムの機能を充実させると同時に「統合型医療情報システム」へと名称を変更、続いて2月に4G回線で通信できるモバイル端末を県内の全消防本部および全ての災害拠点病院と救急医療機関に配備した。
救急隊では以前から配備されている端末を用い、例えば搬送先医療機関が見つからない場合などに複数の病院に一斉に患者受け入れの可否を打診すると、医療機関側の新たな端末にアラートが表示され、即座に返信することができる。
導入されたのは、耐薬品性を備え医療現場で日常的に使われる消毒薬にも耐えられる、富士通製12.5型Windowsタブレット「ARROWS Tab Q704/H」。
今回の導入に際して県では、前橋赤十字病院を始めとする約80の救急医療機関や11の消防本部に端末を貸与する形となることから、「いかに現場に負担をかけることなく、要件を満たすか」を重視していた。
多忙を極める現場に抵抗なく受け入れてもらえるよう、普段使い慣れているPC環境と同じ操作性でWordやExcelなどの使い慣れたソフトウェアが利用できることから、Windowsが選ばれた。本機種にはオプションでスリムキーボードが用意されており、今回はそれを組み合わせることで文章の入力も容易にできるようにしている。
同時に、マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Office 365」も採用した。病院と消防とが画像などのデータを共有したり、消防本部と各消防署間を結ぶビデオ会議を実施するといった情報連携を低コストで実現するのが目的という。導入された端末は4G通信機能を内蔵し、NTTドコモのLTEネットワークを通じて、場所を問わずにアクセスできる。
山がちな群馬県において、災害時にはDMAT(災害派遣医療チーム)が携帯する端末であることから、経験上“つながる”という信頼感も重視されたとのこと。
こうした取り組みによって、群馬県では救急患者搬送の効率化が実現したという。従来は携帯電話から各病院に順番に打診していたため、1病院あたりの連絡確認に2~3分、5件ほど確認にかかれば15分はロスしていた時間が一気に短縮されて、複数病院への打診が一度に完了するようになった。
また、この受け入れ可否の判断を支援するために、事故現場や心電図などの画像を共有。口頭説明では伝えられない膨大な情報を医師に提供することで、即時の判断と受け入れ後の対応をスムーズにしている。
搬送患者の容態を確認し、タブレットから近隣の病院に受け入れを確認
必要に応じてキーボードを着脱して携帯。救急車からの連絡に対応
消防本部からSkype for Businessを使ったビデオ会議などを活用