Welsh氏の意見では、Facebookは新興勢力に追い抜かれる恐怖に突き動かされている。同社はほかのソーシャルネットワークが衰退していったのを目の当たりにしており、そのことが革新的な新興企業を獲得したいという願望につながっているのだという。
ただしユーザーの増加と維持(または群れの世話)は、同社の戦略が持つ3つの側面のうちの1つにすぎない。HarmediaのパートナーであるMax Dufour氏によれば、Facebookは収益増とフロンティアの開拓にも力を入れている。
「同社は数年以内に、収益性の改善を支える企業への投資を増やし始める。おそらく広告、モバイル体験、電子商取引の分野に力を入れるだろう」とDufour氏は言う。「また、新興市場や発展中の市場の新たなユーザーを取り込むことのできる企業の買収にも、引き続き注力するはずだ」
そういった新興市場に対するFacebookの取り組みの例としては、バーチャルリアリティが挙げられる。
3.Microsoft:浪費家
買収した企業の数で言えば、MicrosoftはGoogleに匹敵するくらいM&Aに積極的だ。しかし、同社はコンスタントに新しい企業を買収しているものの、同社のM&A戦略にはビジョンが欠けているように見える。
Welsh氏は、「Microsoftの課題は、どちらかといえば一企業としての戦略の問題だ。戦略的なロードマップがなければ、優れた買収ロードマップを持つことはできない。わたしが思うに、現在のMicrosoftは、長期的な戦略ロードマップを定め、力を入れるべき分野を特定しようともがいているように見える」と述べている。
Microsoftは長年の間、企業や消費者に「Office」ソフトウェアを提供する企業だった。しかし世の中がSaaS(Software-as-a-Service)モデルに移行し、「Google Docs」などの新たな選択肢が生まれてきたため、同社はもはや、従来のような形ではOfficeに頼れなくなっている。
Dufour氏によれば、Microsoftはこれまで175件のM&Aを行っており、AppleやFacebookを含む、大手テクノロジ企業にも出資している。初期の買収は、主にソフトウェア企業としての同社の市場支配力を維持するためのものだったが、1990年後半以降、同社はアプローチを広げ始めた。
Sakoda氏は、Microsoftが買収した企業の数は多数に上り、大型買収を進めるだけの財務的な余裕もあったにもかかわらず、本来買収すべきだった企業を逃してきたと述べている。同氏によれば、Microsoftには、競争力を強化すべきクラウド、モバイル、ソーシャルの各分野での取り組みが不足している。
「Microsoftは写真共有にも、ファイル共有にも手を出さなかったし、Twitterも買収しなかった。Microsoftが買収すべきだったのに逃した企業は多く、しかもこれはそのチャンスを掴むだけの財務的な余裕がなかったからではない」(Sakoda氏)
Microsoftが大型買収を行う意志を持っていることははっきりしている。Dufour氏が指摘しているとおり、同社は状況を大きく変える可能性のある企業に投資し、大きな賭をする意欲を持っている。ただ、同社はNokia、Skype、Yammerや、「Minecraft」を作ったMojangに何十億ドルも投入したが、これらの買収は一貫した戦略を構成しているようには見えない。
しかし現在のMicrosoftは、転換点を迎えている。本記事執筆時点では、Satya Nadella氏が最高経営責任者(CEO)に就任してから18カ月しか経っておらず、同氏がM&Aのアプローチを変える可能性はある。
「Microsoftは製品スイートやソリューションを強化する一方で、クラウドやモバイルを重視する戦略に方向転換しつつあることから、新たなリーダーシップの下で、モバイルやクラウドの分野での買収を増やすことが予想される」とDufour氏は述べている。