スマホ登場から8年の意義
2つめのWorkでは、ソーシャルコラボレーションによってもたらされた変革による組織の在り方や「新しい働き方」をテーマとした。
ここでは、モバイルへの投資を増やす、あるいは現状を維持すると回答した企業が94%に達していること、2016年までの2年間で企業に展開されるモバイルアプリの数が4倍になること、着手できていないモバイルアプリの開発案件を持つ企業が85%あることなど、モバイル活用を取り巻く環境を示した。
「2007年に最初のスマホが発売されてから、8年しか経過していないが、今ではモバイルアプリが企業で広く利用されようとしている」と語る一方、「だが、モバイルには固有の課題がある。基幹システムとの統合、ユーザーインターフェースの問題、さらに、企業そのものがモバイルによる仕事の進め方の変化に対応していく必要がある」と指摘した。
20代のうちSNSを利用している人は90%に達するという。一方、従業員のコラボレーションをさらに進める必要があるとの回答は93%に、膨大な量のメールに圧倒されて処理しきれないと感じたことがあるとした人が94%に達しているといったデータを示しながら、「コミュニケーション方法や手段に縛られることなくお互いに連携でき、人々が共創する新たな働き方が必要である。ひとつのチームとしてつながることが大切である」と語った。
モバイルへの取り組みについては、日本郵政やAppleと高齢者向けサービスに取り組む提携を発表したほか、Appleとの協業で100種類以上のモバイルアプリを開発していることを紹介。さらに、メールサービス「IBM Verse」で届いたメールなどに優先順位をつけて、利用者をアシストする事例などを紹介した。
また、個人の嗜好にあった「個客体験」が重要であることを示し、その背景には、期待通りの対応でなかったため、購入をやめたことがあるという人が78%、個別の対応を受け入れられるのであれば個人情報を提供してもいいという人が80%、自分が理解されていると感じることが、リピートにつながる人が87%に達していることを示した。
「GPSを活用して顧客が店舗の近くにいることを確認。クーポンを自動的に発行して、店舗に誘導するといったことも始まっている。対象が店内にいる人だけでなく、商圏に入ってきた人にまで広がる」といった事例を紹介した。カー用品販売のオートバックスセブンでは、顧客情報や車両情報、車検情報、購買履歴などを組み合わせて、個々の顧客に最適なキャンペーンを実施したところ、キャンペーン告知に対する購入率が10ポイントも上昇したという。「店舗が売りたいときに売るのではなく、顧客が欲しいときに売る仕組みが成果につながっている」という。
顧客体験が成功の新たな指標
3つめの「Forward」では、クラウドとセキュリティによる新たな基盤が創る「新しい未来」をテーマとした。
日本IBMの武藤氏は、「企業が公式に出した情報は全体の10%であり、90%はクチコミ情報が占めている。テレビで気になるニュースや製品をみたら、スマホで調べることが普通になっている。人々の行動が変わり、すべてが変化している」と解説。「顧客体験が成功の新たな指標になる。企業内の情報を活用して製品やサービスをいかに市場に早く提供できるか。顧客が特別な体験を提供してもらえるかが鍵になる」とする。
ここでは、米金融大手Citiグループの事例を紹介。Citiは「銀行が銀行から学ぶことはない。そのほかの業界から学ぶ」として、他の業界を研究。スマホでタクシーを呼ぶことができるUberなどの仕組みをいかに金融業界に持ち込むかを考えたという。そこで考案したサービスが「JoinPay」。友人と食事をした際の支払いをそれぞれに割り振ることができ、それをその場で電子マネーで決裁できるというものだ。
VISAは、200以上の国と地域の3600万件の加盟店をつなぎ、1秒間に4万7000件の取引情報をリアルタイムに不正監視している。「VISAには20年間サービス停止ゼロという安全性がある。膨大な取引データから行動を分析して新たなサービスを提供していく。これを支えているのがIBMのメインフレームである。世界の業務データの8割がIBM製メインフレーム上である。今では700兆円のクレジットカード決裁がIBMのインフラで行われている」と述べた。
武藤氏は「新たな技術を活用して、新たなビジネスを作り、社会の変革をリードしていく役割を日本IBMが果たしていく」と講演を締めくくった。
名古屋会場の様子