データで成果をあげるためのチームとは
次に小間氏はデータを十分に生かせる体制作りについて語った。データを使って成果を出すには統計などのデータサイエンススキルだけでは足りず、データの統合や、データの流れを支える基盤を指す「データエンジニアリング」が重要であるとした。データ利用が活発な米国では、サイエンススキルとともにデータエンジニアリングのサービスを合わせて提供する企業に引き合いがあるという。

ヤフーが考えるデータスペシャリストに必要な3つの要素
しかし、最適なエンジニアリング環境を構築でき、ビジネス部門のことがわかる“データのスペシャリスト”を養成するのは容易ではない。ヤフーでは優れたデータのスペシャリストを養成するため、ビジネス部門とデータ部門が合同でプロジェクトごとにチームを結成する体制を作っている。判断と責任を各現場にある程度委ねており、プロジェクトにより、ビジネスとデータ部門が互いの得意、不得意を補うことができる。これにより成果につながるだけでなく、各事業部ごとに分かれてデータ分析に必要なシステム環境を構築しなくて済むため、コストを抑制できると説明する。

ヤフーのデータ分析体制
さらにデータ分析の担当者がプロジェクトに実際に入ることにより、現場の“潜在ニーズの風”を感じることができる点が重要とした。「現場にはさまざま感情が渦巻いている。トップの急な決断による混乱やアプリのレビューにある辛辣な意見などの課題をどう解決するのか、臨機応変に対応しなくてはならない。現場のニーズの風を感じられるようになると、データスペシャリストから自発的な提案が出るようになり、指示以上の価値を出すことができるようになる」(小間氏)
小間氏はまとめとして、データチームを成功させるためのコツを3つ挙げた。まず、データ統合基盤やデータフォーマットを整えなければ、サービスレベルを上げることはできないという認識を経営者と共有することだ。さらに、中心となるデータのスペシャリストが10人程度養成するだけでなく、一般社員にもデータを使えるようなわかりやすいインターフェースやツールを与え、データ活用の社内人口を増やすことを念頭に置くべきと語った。
最後に、データサイエンティストは、分析だけ集中しがちだが、データから課題を発見し、使ってもらわなかれば意味がないと指摘した。例えばビジネス部門に分析レポートをメールで送るだけではなく、きちんとそれを読んで利用してもらえるよう、働きかけなければならないという。「解くべき価値のある課題を見つけ、ビジネスインパクトにつながるまで価値を出す意志が重要。(現場へのコミュニケーションなど)データを使ってもらうための仕事をやりきることがデータスペシャリストに必要」(小間氏)