リトアニアのICT産業は、驚くほどの勢いで成長している。多くのテクノロジ企業が同国に進出するのは、インフラや人材、そしてビジネス指向の考え方に引かれてのことだ。リトアニアには欧州でもっとも高速で手頃な価格のインターネット接続と、世界のICTスキルランキングで16位に位置するテクノロジに強い国民を抱えており、最近ではGoogleや米国の証券取引所NASDAQ、AIGなども進出している。
バルト諸国のIT企業上位20社までのうち、13社がリトアニアに拠点を置いており、2015年には同国のGDPの25%、輸出額の80%を、IT、レーザー技術、バイオテクノロジ、ナノテクノロジ、およびマテリアルサイエンスが占めると予想されている。コンサルティング企業EYによれば、リトアニア経済は2014年に2.9%成長したが、2015年には3.6%の成長を遂げる見込みだという。さらにリトアニアは、2015年1月にユーロ圏の一部になった。
テクノロジ業界の成長
国外からの投資を誘致する政府機関、Invest LithuaniaのゼネラルマネージャーMantas Katinas氏は、「ICT部門への国外からの投資は、2008年から2013年にかけて70%増加した。また同じ期間に、企業数は10.5%増加している」と話す。
リトアニアは近年、テクノロジ企業と、技術的な専門性を必要とするその他の企業の両方にとって、魅力的な国になっている。Googleは最近、リトアニアの首都ヴィリニュスに営業オフィスを設置しており、NASDAQも同じく首都に研究拠点を開設した。また、シカゴに本社を置くソフトウェア、ウェブ、モバイルの開発会社Devbridgeは、リトアニア国内に2つのオフィスを開設し、150人を雇用する計画だ。
Katinas氏は、「ITは同社の主要な事業ではないが、人材プールとコストあたりの品質を理由に、IT開発の拠点にリトアニアを選ぶ企業もある」と話す。同氏はそのような例として、Intermedixを挙げた。2014年、医療システムや緊急対応システムを提供する同社は、同国の第2の都市であるカウナスを、最初のオフィスを置く拠点として選んだ。同社は現在、200人を超えるITスタッフを抱えている。
最初のオフィスをヴィリニュスに開設したが、その後カウナスに2つ目のオフィスを設けたBentley Systemsや、東部および北部ヨーロッパのサービスセンターを置く場所としてヴィリニュスを選択したAIGなどの例もある。また、金融サービスのWestern Unionは、リトアニアで営業を始めてからかなりの期間が経っている。
Katinas氏は、外国企業が同国で得られる恩恵として、「ビジネス環境、人材プール、高度なICTインフラ」を挙げた。「リトアニアはさらにビジネス環境を改善していくつもりであり、特にICTと研究開発に力を入れている」(Katinas氏)
人材プールと安い人件費
リトアニアの魅力の1つは、ITのプロフェッショナルが豊富なことだろう。Invest Lithuaniaによれば、ICT産業で働いている人の数は現在2万6000人で、さらに毎年1600人のICTを専門とする学生が大学を卒業する見込みだ。「国外投資家の46%は、特にこの人材プールを目当てとしてリトアニアを選択している」とKatinas氏は言う。

リトアニアの首都ヴィリニュスの旧市街
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