一部の地場企業は、これらの特典を活用して事業展開を加速している。中央ヨーロッパでもっとも成長が早いテクノロジ企業を調査したレポートであるDeloitte Technology Fast 50の2014年版では、3つのリトアニア企業が選ばれた。最新のICT技術を利用して資産を管理するRuptela UABは、過去5年間で1211%という急成長を見せている。Data House UABは861%の成長を見せ、nSoft UABは337%成長したとされている。
GoogleとNASDAQ
NASDAQがリトアニアに進出したのはかなり前のことで、2007年のOMX(北欧やバルト地域の証券取引所を運営する証券取引管理会社)との合併を通じてのことだ。同社はリトアニアでのIT産業の急成長を目撃してきた。
Nasdaq Vilnius Servicesの最高経営責任者(CEO)Arminta Saladziene氏は、同社が投資先を決定する際には、さまざまな要素を考慮に入れると話す。その中には、テクノロジや通信インフラ、教育を受けた人材のプール、そして生活の質が含まれている。「リトアニアはこれらすべてで高い評価を得ている」と同氏は言う。
NASDAQのヴィリニュスオフィスには90人のスタッフがいるが、同社はこのチームをさらに拡大する予定だ。このスタッフの一部は、米国、スウェーデン、インド、フィリピン、オーストラリアに拠点を持つ、同社のGlobal Technology Solutionsグループに属している。「バルト諸国での事業には十分な成長のチャンスがあると考えており、投資を進めている」(Saladziene氏)
Googleもまた、バルト諸国との距離を縮めるため、ヴィリニュスにオフィスを構えた。「われわれは小規模なチームからスタートしたが、地域のIT産業にまつわる環境の動向によっては、オフィスをさらに拡大したいと考えている」とGoogleのバルト諸国国別事業開発マネージャーのVytautas Kubilius氏は述べた。
ITビジネスの観点から見ると、バルト地域の最大の資産は、デジタルインフラに対する早い投資、輸出を中心とする経済、およびIT企業に有利な政策だと同氏は言う。
「バルト諸国にはITに詳しい人々が多く住んでおり、欧州連合を1つのデジタル市場と見て取り組みを進める場合、この地域は非常に有利だと考えている。リトアニア、ラトビア、エストニアは、イノベーションやビジネスのしやすさに関するランキングで、順位が上昇し続けている」(Kubilius氏)
Kubilius氏は「われわれは長期的な観点からここに来た」と述べていた。
革新的企業のための環境
Uber、Wix、Revel Systemsなども、西ヨーロッパに比べてコストが低くて済み、熟練した開発者を雇用できるリトアニアの事業環境の恩恵を受けている。「リトアニアのテクノロジ業界が持つ、人材、創造性、および限界に挑戦しようとする意欲の組み合わせは、ほかには見られない」と、Wixのプレジデント兼最高執行責任者(COO)であるNir Zohar氏は語る。
Wixは、ヴィリニュスのオフィスに30人の従業員を抱えている。このオフィスには研究開発部門の中核的な組織が置かれており、エンジニア、QAスペシャリスト、UXデザイナーから構成されている。「リトアニア支部を開設することを決めたときには、活気のあるビジネス文化や、テクノロジプロフェッショナルの豊富さに魅力を感じた。当社にぴったりだと思えたし、実際にそうだったことはこの2年間で証明された」(Zohar氏)