海外コメンタリー

サイバー防衛は方針転換が不可避--セキュリティの将来を考える - (page 2)

Violet Blue (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル 2015年06月22日 06時15分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 RANDはこう述べている。

 それぞれの新しい手法の新規性やイノベーションが、新しい対抗手段に阻まれたことから、効果のある手法と、単に複雑さとノイズが加わるだけの手法を見分けるのが難しくなり、それによって、組織の有限の時間とリソースが消費された。

 指標を使わなければ、消費者が、妥当な製品ではなく優れた製品に多く支出する理由ははっきりと分からない。

 そして、最善のツールと最大のリソースがあっても、人間の本質に起因する多くのセキュリティ上の弱点は回避できない。

 人間の本質をセキュリティ上の脅威とみなすという論点は、この報告書全体のテーマとして繰り返し登場する。とりわけ、「BYOD」(企業での私有デバイスの使用)における「それがあると厄介だが、ないと生きていけない」という側面や、不適切なプログラミング習慣(特にアプリケーションのセキュリティに関して)を厳しく非難する部分などで論じられている。

 RANDは、ある組織がサイバー攻撃によって被りうる損失を算定するために、組織で決まったある種のサブルーチンを作り出した。これは、CISOによって考えられたパラメータで表される。

 RANDは、「そうしたサブルーチンは並行してではなく順々に実行され、期待から、痛みを伴う取り組みへと進む状況を表している」と説明している。

  • ユーザーを教育することで十分だと期待する。
  • それが十分に機能しなければ、攻撃者を阻むためにサイバーセキュリティツールを購入する。
  • トレーニングとツールを両方使っても十分ではないことが分かれば、制約を課すようになる。最初に、アドレス可能なデバイスの急激な増加を押さえる。次に、少なくとも最も重要なプロセスを隔離することで保護するようにする。

 情報漏えいによる損失についてのニュース記事を見たら、疑った方がいい。

 研究者たちは、現時点では、損失はほぼ主観的な経験であることを発見した。損失を見積もる方法を実際には誰も知らない。そこでRANDは、損失見積もりのプロセスを細かく分析した(モデルの仕様は、報告書の付録に掲載されている)。

 RANDは次のように述べている。

 われわれのモデルは、(10年間にわたる)サイバー空間の危険な状態から生じるコストを最小限にしようとする組織の苦労を表わしている。こうしたコストは、以下の要素の合計として定義される。

  • サイバー攻撃による損失
  • ユーザートレーニングのための直接的なコスト
  • ツールの購入と使用のための直接的なコスト
  • BYODおよびスマートデバイスの採用を制限することに伴う間接的なコスト
  • 特に慎重な扱いを要するサブネットワークを物理的に遮断することによる間接的なコスト

 RANDは、そのサイバー攻撃コストモデルを、医療機関、銀行、防衛関連企業(機密扱いでない文書)という、サンプルの企業3社に適用した。

 驚くには当たらないが、損失に関してはそれぞれが異なる状況を示すことが分かった。しかし、RANDはこのモデルに少し工夫をしており、トレーニングやツール、BYODのレベル、隔離されたサブネットワーク(物理遮断)といった変数の要素を変えて、その上で、あらゆるものが感染したらどうなるかなどを試している。

 その結果を知るには、報告書を読む必要がある。そしてRANDは最終章の「Lessons for Organizations」(組織の教訓)と「Lessons for Public Policy」(公共政策の教訓)で、特に組織と政府の間での情報共有によって何を行うべきかについて結論を出している。

 しかし、おそらく最も興味深い結論は、RAND独特のものだろう。「サイバーセキュリティの将来について楽観的になる最大の理由は、それについて悲観的な人々が増えていることだ」

 読者の皆さん、結局のところ、もしかするとサイバーセキュリティの未来にわれわれの居場所はあるのかもしれない。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連ホワイトペーパー

SpecialPR

連載

CIO
月刊 Windows 10移行の心・技・体
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
セキュリティインシデント対応の現場
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]