米Akamai Technologiesは、世界のウェブトラフィックの3割あまりを配信しているというCDN(Contents Delivery Network)世界最大手として知られる。世界中に張られたネットワークは、大規模DDoS対策などのセキュリティ分野でも役立てられている。
最近のウェブトラフィックの動向や今後の取り組みについて、日本法人のアカマイ・テクノロジーズ職務執行者社長、徳永信二氏に聞いた。
エンタープライズ向け事業強化へ
日本法人であるアカマイ・テクノロジーズ職務執行者社長、徳永信二氏
Akamaiは好調な売り上げ推移を続けている。2014年の世界での実績を3事業分野別で見ると、「Media Delivery」が前年比21%増の9億1200万ドル、「Performance & Security」が28%増の8億7900万ドル、「サポートとサービス」36%増の1億7300万ドルと、各分野とも大幅に伸ばしている。
CDNというと、コンテンツやゲーム配信に使われるイメージを持つかもしれないが、近年ではエンタープライズアプリケーション向けのビジネスがほぼ同規模へと成長してきている。
徳永氏は「Akamaiが取り組んでいるのは、インターネットを高速に、安定して、セキュアに使えるようにすること」と語る。
Media Deliveryは、その用途の一部に過ぎないというわけだ。徳永氏は、2012年4月に日本法人社長に就任して以来3年間、日本市場におけるエンタープライズ向けビジネスに力を入れてきた。
「重いトラフィックをオフロードしたいユーザーはもちろん、セキュリティ、アプリケーションのパフォーマンスなど、多くのユーザーがメリットを得られると考えている」という。
就任当初、日本ではどちらかというとゲーム配信など大量のファイルを配信するユーザーが中心で、エンタープライズアプリケーションやセキュリティについては、グローバルの動向に比べて展開が少し遅れている傾向があったとのこと。
3年間かけて、同規模の比率へと押し上げた。主要な施策の1つがパートナービジネス拡大だったという。メディア配信用途ではダイレクト販売が可能だが、「エンタープライズでは“パートナーエコシステム”との連携は必須」と話す。
2012年から2014年にかけて大幅にパートナーを増やした同社。現状は拡販が主な目的だが、クラウドなどAkamaiが提供するシステムと連携させることで構築するサービスも徐々に出てきている。最終的には「組み込みソリューションとして、ユーザーが選べるようにしたい」(徳永氏)とのこと。
エンタープライズのアプリケーションに関して、国内でのユーザー事例も多い。例えば、大容量のデータを転送するニーズを持つ企業だ。製造業などでは、開発や製造の拠点がグローバル化してきた結果、CADデータをグローバルで共有するケースが増えている。
例えば、CADデータが機密データでもあることから、専用線を使っていた企業。コストの制約もあり、使える帯域が限られるため、転送に半日から丸一日を要していた。だが、Akamaiのシステムを導入することで、データの暗号化でセキュリティを確保しつつ、転送も1時間程度へと短縮できたという。
「ネットワークのコストは“岩盤コスト”とも呼ばれている。小さい拠点でもセキュリティ面から専用線を用意しなければならないなど、下げることが難しい費用とされてきた。そうした部分にも効果を発揮する」(徳永氏)