大木豊成「Apple法人ユースの取説」

限界があるからいい--iPadが企業で使われる本当の理由 - (page 2)

大木豊成

2015-06-19 07:00

部内のメールを禁止して社内SNSのみでのコミュニケーション

 野村證券の国内IT戦略部では、部内のコミュニケーションでメールを禁止し、社内SNSであるChatterを活用している。

 ところで、多くの企業では社内SNSという言葉にアレルギーがあるのではないだろうか。筆者は、2004年にmixiやGREEといったSNSが立ち上がった頃、有志で社内SNSの勉強会を開催していたことがある。そこには毎回定員枠いっぱいの参加があり、社内SNS導入の取り組みに興味を持った人が集まっていたが、その後の報告を聞くと芳しくない企業がほとんどだ。

 導入に至らない理由は、社外向けのSNSとは違って「何を書けばいいのか分からない」「必要な報告と、不要な報告の区別が難しい」など、社内SNSを活性化させるまでに障壁が多くあるためだと聞いている。

 そのような中で、野村證券の国内IT戦略部では社内SNSを実に有効に使っている。同部は、情報共有のための会議を大幅にカットし、社内SNSで完結させるようにした。例えば、障害情報にはいくつかのレベルがあり、軽微なものまでいちいち報告を受けていては困る、という管理職もいるだろう。

 しかし、軽微だと思っていたものが、のちに大きなトラブルになることもあり得る。そうなると「なぜ最初に報告しなかったのか」という問題が起きかねない。そこを社内SNSで共有することで、メールで報告を受けるほどもないが、状況を把握しておくことができる。メールで宛先が抜けていた、という心配も解消される。

 実際、筆者が藤井氏と食事をご一緒した際にも、Chatterに情報共有の連絡が入り、藤井氏が数分間対応する場面があった。以前なら携帯電話が鳴っていたかもしれないことが、数分間の対応で完了するのだから、活用次第で社内SNSはとても便利になる。

iPadだからこそのコミュニケーション

 前述の社内SNS活用は、iPadだからこそ成立したと言えるだろう。自分がどこにいようと、iPadさえ持っていれば完結するところが重要だ。携帯電話が鳴って、その後にノートPCを起動させる。といったことも必要がない。

 人によっては「プライベートな時間まで」とネガティブに捉える人もいるだろうが、定時以降に緊急で呼び出されるよりはずっといいのではないだろうか。藤井氏も「部内会議が10分の1ほどに減った」と語っている。活用の目的を明確にし、ポジティブに活用することで得られるメリットは大きいのだ。

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