たとえば、ITの分野でイノベーションが生まれ続けている米国では能動的であるとともに会議でも自分の意見が要求され、上司が最も使うセリフは、教育機関同様、「What do you think(君はどう思う)?」という。研修でも上司が一方的にこうしろ、ああしろというのではなく、君の考えを聞かせてほしいと問いかける機会が、日本に比べて多いと感じる。
会議で自分の意見を求められ続けると、常日頃から自分で考える習慣がつくようになってくる。一例だが、道端を歩いていて、流行っている店を見つけたら、どうして流行っているのだろうか? おそらくこういう理由ではないかと自分なりの推測を立てるようになることさえある。
ただし、能動的に会議に臨み、積極的に意見を述べさせるためのこの取り組みには、いくつか気をつけておくべきポイントがある。
まず、基礎ができていない段階で意見を求めてもまともな回答は出てこない。プログラミングのプの字もわかっていない人に、「What do you think?」と聞いても意味はない。多くの職業において、まずは最低限の知識、基礎的な技術を習得しなければならないことは言うまでもない。
しかし、日本の教育では、あまりにもインプットに比重がおかれてきた。文科省がついに重い腰をあげなければならないほどに、その影響は甚大であり、それは企業にも及んでいるのではないか。

ここで、学習とは何なのかを定義してみたい。学習には「インプット」と「アウトプット」の2つの段階がある。まずは「インプット」。教師や先輩、上司の持つ優れた知見を学び、吸収する段階だ。インプットなくしてアウトプットはない。最低限の知識、技術の習得は不可欠だ。しかし、どんな知識も使われなければ意味がない。学習におけるアウトプットとは、知識の活用、実践、さらには自分なりに応用していくことを指す。
米国の学校教育では、基礎的な知識を習得しつつも、自分で考え、答えを見つけるトレーニングをさせる。こうした能動的な学習姿勢は、これまでの日本の学校教育に少し不足していた要素だ。
だが、既にあるものを「改善」するのではなく、新たにものを創造する活動、すなわちイノベーションを起こす際には、成否を左右する決定的な要素になってくるのである。
日本の企業に、アクティブラーニングを導入する際、重要になるのはマネージャー層の教育である。鍵は答えを教えないこと。教えるのではなく、答えを発見させる指導法をマネージャー層に修得させるのだ。