新人が入ってきたら3つの段階で、能動性を喚起していく。「基礎」「応用」「独立」の3つである。まず1つ目の基礎とは、その分野における基礎的な知識や技術を習得させることである。ここではむしろ、「独自の考え方」を求めない。必要な知識の正確な習得を求める。そのために必要なことは、アウトプットを習慣化させることである。

研修の様子
習った先からその知識をアウトプット、つまり口頭で復唱させる。黙って聞いていてもきちんと頭に入っているとは限らない。習ったことをすぐにその場でアウトプットさせる。単純だが、実に効果がある。アウトプットさせれば、教える側も誰が理解しており、誰が理解していないかもわかる。
次は応用。実際の現場に立たせ、学んだことを本人にやらせてみる。聞くとやるでは大違いだ。自分でやってみるといろんな気づきが生まれる。机上ではうまくいけそうでも、実際のビジネスの現場ではうまくいかないことが多い。そうした荒波に立ち向かい、機転を利かせながら乗り越える能力をつけるのだ。
ポイントはいかに失敗するかということ。失敗は多くのことを教えてくれる。正解を暗記させれば、失敗から学ぶ力が身につかない。必要なことは、ビジネスを破壊しない程度に、失敗させ、そこからリカバリーする方法を教えることなのだ。そして最後は独立。
ここで言う独立とは、上司からの独立、つまりは独り立ちをさせることを指す。新人にでもできる仕事はある。新人だからといつまでも手取り足取りで教えるのではなく、早い段階で新人にもできる最低限の仕事を任せてみること。これが本人の能動性を喚起する。
自分が運転手になると、人は道を覚える。助手席に座っているだけではなかなか道を覚えない。これを「ドライバーズ効果」と呼んでいる。 大切なこと、それは教えないこと。本人に車を運転させよう。運転手になれば、人は勝手に本来もっている力を最大限発揮するようになる。言うは易く行うは難しではあるが、「能動性を喚起すること」は、人を育てる最大の鍵になり得る。
- 得能 絵理子
- 早稲田大学卒業後、株式会社アクティブラーニングに入社。「能動性喚起(アクティブラーニング)」をテーマにキャリア育成、企業改革、地方自治体改革のプロジェクトなどに従事。また、クリエイティビティやチームワークを始めとするヒューマンスキルも企業や教育機関で指導。日経新聞社主催セミナーや、日経BP社ビズカレッジPREMIUMで講師を務めるなど、数百名を超える参加者も能動的に巻き込むワークショップは定評あり。
