あらゆるモノをインターネットにつなげる「IoT(Internet of Things)」を活用して、製造業の競争力を高めようという動きが、グローバルで活発化している。日本は果たして勝ち抜けるか。
NECがIoTものづくりソリューションを体系化
NECが先ごろ、IoTを活用した次世代ものづくりを支える製品、サービス群「NEC Industrial IoT」を提供開始すると発表した。ものづくりにおけるIoTの活用ポイントとして、「現場・現物・現状のデジタル化」「見えない・隠れた世界を見通す」「ITとOT(Operational Technology:制御・運用技術)の連携」「製品・サービスのスマート化」の4つを挙げ、これらに対して同社が強みとする画像認識やビッグデータ分析、SDN(Software-Defined Networking)などの技術を活用した各種ソリューションを体系化したという。(図参照)
「NEC Industrial IoT」のソリューション体系(出典:NEC資料)
この取り組みの母体となるのは、同社が2012年から生産革新活動のノウハウなどを提供している「NECものづくり共創プログラム」。同プログラムには現在、562社の会員が加盟しており、これらの会員企業とともに、IoT活用に向けた研究や実証実験などを推進し、今後も継続的にソリューションを拡充していく計画だ。
NEC Industrial IoTのさらに詳しい内容については他稿に委ねるとして、ここではいわゆる「IoTものづくり」におけるグローバルの動きに注目したい。
官民挙げてのグローバル競争が本格化
NEC エンタープライズ事業担当 執行役員 松下裕氏
NECのエンタープライズ事業担当の松下裕執行役員によると、IoTものづくりにおけるグローバルな動きとしては、官民を挙げて製造業の革新を推進しているドイツの「インダストリー4.0」、強みのIT活用を武器に先進企業が実証ベースを先導している米国の「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」が活発な取り組みを行っており、中国やインドでも官民を挙げたプロジェクトが立ち上がったという。
「これらの動きは、グローバルな事業の主導権争いとともに、IoTに関連する技術の国際的な標準化や規格化の観点からも、日本の製造業において大きな脅威になりつつあり、日本も団結して対抗していく必要がある。今回、当社が打ち出した新ソリューションには、そうした思いも込めている」(松下氏)
先行するドイツや米国に対して、官民を挙げての取り組みが出遅れていた日本だが、ここにきて具体的な動きが出始めてきた。IoTによる国内製造業の革新を目指す団体と銘打った「インタストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)」がこのほど設立されたのがそれだ。設立時には27社の大手製造業と12社の中小製造業が参画し、その中には富士通、日立製作所、NECといったIT大手も名を連ねている。
IVIが目指すのは、ものづくりの現場や製品そのものをIoT技術によって革新することだ。まずは「ビッグデータによる予知保全」や「遠隔地の工場の操業監視」などの課題に取り組むとしている。
さらに、日本政府がこのほどまとめた成長戦略の素案でも、IoTは重点項目として取り上げられている。
IoTがこれまでの「ものづくりのあり方」を大きく変えることは、もはや疑いの余地はない。かつてこの分野で、確固たる競争力を保持してきた日本がIoT技術との組み合わせで活力を取り戻し、これからのグローバル競争を力強く勝ち抜いていけるか。日本の製造業の未来をかけた新たな戦いが始まった。