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成長するほど不安になる世界--シェアリングエコノミーの可能性

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2015-06-30 07:00

ITバブルとの違い

 先週、日経平均株価が2000年のITバブルを超え、これがバブルか否かを問う議論が活発だ。日経新聞の解説は、今回の株価上昇には、日本企業が取り戻した成長力の裏付けがあるとする。つまり、日本企業は蓄積してきた資金を投資へ振り向け始め、ROEが高まっていると。

 確かにそれは事実だろう。しかし、今回の成長に関しては、バブルか否かとは別の次元において、漠然とした将来への不安が消えないことが最大の違いだ。

 Business Insiderに気候変動が各国に与える影響を1枚のインフォグラフィックで表現した地図が載っている。日本は、アフリカや西アジアに比べればましな方である。

 しかし、近年の雨の降り方がなんかおかしいというのは誰もが実感していることだ。そして、Ian Bremmer氏が指摘する通り、大国間のパワーバランスが崩れる中で、こうした世界的な課題を解決する力が、今の世の中では弱まっている。

 そして、日々報じられる安保の問題や年金の問題は間接的に、あるいは直接的に、不安定化する世の中の状況や行き詰った社会の課題を感じさせる。仮に経済の成長そのものに自信を持つことができたとしても、それが明るい未来につながっているように思えない、というのがITバブルの頃と現在の最大の違いである。

新興国の成長モデル

 それでも、成長を前提とする世界経済がその歩みを止めることはない。2050年には世界のGDPの50%を占めると言われるアジアの新興国はその期待を背負い、成熟国からの投資が続く。

 かつて、世界の製造工場であったアジアは、今は製造工場であり市場である。日用品から耐久消費財まで、どんどん売っていくことで成長を取り込む戦略である。

 新興国の成長モデルは、現在の成熟国とは異なるという。いろいろな面で今の成熟国が成長した時とは状況が異なっているから、その型落ち製品を持ち込んだところで売れないという議論だ。それゆえに、新興国で成功するためには、新興国から学び、新興国のイノベーションを取り込むことが肝要だと。

 しかし、これはあくまで売れる商材の作り方の議論である。基本的には成熟国と同じような消費社会を新興国でも再現していこうという考え方は変わらない。

 でも、将来に対する漠然とした不安を感じるとき、新興国で実現するべき成長は、今までの成熟国の成長とは全く異なった形であるべきなのではないかと思わざるを得ない。なぜなら、そこに持続性が伴うとは思われないからだ。

シェアリングエコノミーのモデル

 世界中で問題を引き起こし、既存事業者からの反発を受けながらも広がり続けるサービスがある。UberとAirbnbだ。これらテクノロジ企業の提供するサービスが実現しているのは、シェアリングエコノミーという新しい経済モデルである。

 新しく車を買ってくるのではなく、今ある資産を有効活用して移動手段を提供する。新しくホテルを建てるのではなく、空いている部屋を活用して宿泊サービスを提供する。新たな設備投資を伴わずに経済を活性化させるモデルだ。

 これまでの経済の成長は新しいものを作り、それを売り、さらに新しいものを作り、それを売り、を繰り返してきた。そして、今度はそれを新興国でまた繰り返して成長を持続しようとしている。

 しかし、この成長モデルが限界に来ていることは明らかだ。われわれがUberやAirbnbが問題を孕んでいることを認識しながらも共感するのは、今ある資産を活用するという点ではないだろうか。

 別に正解を持っている訳ではない。でも、今われわれが感じている不安、持続的成長への疑念を解消するヒントがシェアリングエコノミーのモデルにはあるのではないか、というのが言いたいことである。

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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