原則として、各組織が個別に管理していたそれぞれの属性情報を全組織が1つにまとめて所持するわけではありません。基本的にはこれまでと同様、属性情報は必要に応じて相手先に照会するだけです。その照会を、より迅速かつ確実に行えるようにするための「新しい個人識別の仕組み」が、このマイナンバー制度の基本的な考え方なのです。
例えば江東区に住んでいたAさんが世田谷区に引っ越したとします。世田谷区がAさんにインフルエンザの予防接種について案内をしようと思った場合、これまでは世田谷区が江東区にAさんの予防接種履歴を氏名などの基本情報で照会していたことを、マイナンバーによって迅速かつ確実に照会できるようになる、というイメージです。
冒頭に挙げたマイナンバー法改正案には、地方自治体が条例により独自にマイナンバーを利用する場合においても、情報提供ネットワークシステムを利用した情報連携が可能になります。また、地方自治体の要望などを踏まえ、雇用や障害者福祉などの分野において必要な情報連携を実施するといった追加事項も含まれています。
マイナンバ―をきちんと管理するために
さて、前回は、組織が構成員の個人マイナンバーを取り扱う上での主な課題についていくつか挙げたと思います。ここからはそうした課題への対処についてもう少し掘り下げてみたいと思います。
それは下記の4点でした。
- 取り扱われる個人マイナンバーは従業員とその扶養家族のもの(現状では顧客の個人マイナンバーは特定の企業や団体しか扱えない)である。「顧客情報(営業秘密の1つとしての個人情報)」のような、既に対策を何重にも施された秘密情報とは異なる場所にて保管、管理されるケースが想定され、現状では流出を防ぐ対策が不十分である可能性がある
- 社内の個人マイナンバーを管理、使用する権限や職責を負う部署もしくは担当者は主に人事、労務であり、営業秘密を管理、使用する部署や担当者とは異なる場合が多く想定される。1と同様の理由でリスクマネジメントに関する規定類の設定や、担当者のスキル習得などが不十分である可能性がある
- 取り扱う部署の業務特性上、個人マイナンバーはデジタルのみならず紙で取り扱うケースが多くなること、その紙の書類は大半が「個人特定可能なマイナンバー」になっている状態が想定される。その書類を社外に持ち出す(行政機関や自治体に持参し提出など)ことが想定され、ITでのセキュリティにのみ気を配ってもそれだけでは済まない可能性がある
- 万が一の流出トラブルでこうむるダメージがトップレベルの「特定個人情報」である。収集方法や取扱範囲の設定、廃棄などの処理方法やこれらの通知方法などといった諸々の業務フローを新たに、厳格に規定する必要がある
1と4については体制の構築そのもの、つまり組織的、人的、物理的、技術的な対策が必要です。具体的には下記を指します。2についても同様ですが、あえて限定するなら主に人的安全管理措置が中心でしょう。
- 組織的(組織体系の整備・責任者と担当者の権限責任範囲の明確化・報告連絡体制・運用と記録など)
- 人的(定期的な研修実施・特定個人情報の秘密保持に関する事項の就業規定への明記など)、物理的(管理区域と取扱区域の指定と入退管理記録・情報保管時の施錠・復元不可能な廃棄手段の指定など)
- 物理的(管理区域と取扱区域の指定と入退管理記録・情報保管時の施錠・復元不可能な廃棄手段の指定など)
- 技術的(アクセス制御・不正アクセス防止・漏えい防止<いわゆる情報セキュリティの範囲>全部の検討~規定)