中国は経済規模が大きく、テクノロジ分野で主導的な立場を握ろうとする野心を抱いているため、同国の保護主義による米国テクノロジ産業への影響は、非常に大きなものになる可能性がある。2015年1月、中国政府は中国の銀行に製品を販売した企業に対し、ソースコードの提出と、積極的な監査への同意、および製品で使われている暗号鍵の提供を義務づける厳しい政策を導入した。西側諸国の企業は、これらのステップを、中国市場からの西側企業の締め出しをはかる手段と見ている。中国政府はこれ以前にも、米国企業であるIBM、EMC、Oracleから製品を調達するのをやめるよう銀行に強く求めたことがあるが、この政策は米国の圧力を受けて撤回された。
既存の超大国である米国と、超大国になろうとする中国の間に摩擦が生じることは当然だが、それでも米国と中国は、どちらも貿易の増加と強い政府間関係から多くのものを得ることができる。しかし、米国が監視活動についての方針を明確にし、この嫌悪すべき歴史の一章にはっきりと幕引きをしない限り、政治的、経済的協力関係を結び、それを維持するのに必要な信頼を得ることはできないだろう。もちろん、監視活動の亡霊が米国の国際的地位に暗い影を落としている限り、貿易交渉の中で他国に「ルールに従って振る舞う」ように要求することも難しい。
米国の政策に対するITIFの勧告
ITIFは、NSAの監視活動に対する反発と、米国のテクノロジ産業への悪影響をなくすため、米国の政策立案者は次の方針に従うべきだと論じている。
- 国内および国際的な米国の監視活動に関する透明性を強化する。
- ソフトウェアへの秘密のバックドアの設置と、暗号の弱体化の取り組みに反対する。
- 他国の政府と相互刑事共助条約を締結し、法執行機関が国境を越えて協力できるようにする。ITIFは、米国がこの条約を無視して他国で独自に情報を収集しようとすれば、米国企業に悪影響が及ぶと述べている。
- 政府の情報へのアクセスに関する国際的な法的基準を作る活動を支援する。
- 太平洋パートナーシップ協定(TPP)のような貿易協定を結ぶ。
米国の地位は果たしてそれほど安泰か?
こういった改革を行うべきだとする主張は、現在の政治的状況からすると純真すぎるように聞こえるかもしれない。しかし、米国政府が監視プログラムを継続しながら、米国のテクノロジ企業の国際的な評判に対する悪影響を防げると考えるのは非現実的だ。
米国が例外主義を主張することはできるかもしれないが、経済的な問題や国際ビジネスに関して言えば、米国は無敵ではないし、これまでもそうだったことはなかった。
米国政府が政治的な課題や軍事的な問題を優先することは可能だし、実際にそうしているが、貿易や経済の問題は、そのやり方で解決することはできない。米国は世界的な世論の反感がテクノロジ業界に及ぼす悪影響について認識する必要があるし、他国の世論はNSAの自分勝手な都合に付き合ったりはしないだろう。
もちろん、米国はテクノロジ分野での主導的な地位が安泰だと無邪気に信じることはできない。米国は太平洋の反対側に位置する、長く輝かしい歴史を持つ中国からの挑戦を受けている。中国は、経済大国になるだけでなく、次世代の世界的なテクノロジリーダーになることを目指している。
米国の貿易相手国やその国々の消費者は、米国政府の監視活動に関する非妥協的な態度をいつまでも容認してはいないだろう。時計の針は動いているのだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。