本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、弥生の岡本浩一郎 代表取締役社長と、日本マイクロソフトの樋口泰行 代表執行役会長の発言を紹介する。
「新クラウドサービスで小規模法人の会計業務をさらに進化させたい」 (弥生 岡本浩一郎 代表取締役社長)
弥生の岡本浩一郎 代表取締役社長
弥生が先ごろ、小規模法人向けクラウド会計サービス「弥生会計オンライン」を提供開始すると発表した。岡本氏の冒頭の発言は、その発表会見で、新サービスへの意気込みを語ったものである。
新サービスは、同社の主力製品である小規模法人向け会計ソフト「弥生会計」の機能や操作性を踏襲したSaaSで、これまで会計ソフトを利用したことがない法人を中心に訴求していく構えだ。
岡本氏によると、現在、小規模法人の約8割が会計事務所と契約しており、そのうちの約半数は記帳作業まで委託しているという。外部委託することで自社のコアコンピテンスに集中できるというメリットはあるものの、試算表などの会計情報の入手にはタイムラグが生じるため、タイムリーに業績を把握することが難しいのが現状だ。
一方で、自社で会計ソフトを用いて記帳することは、リアルタイムで業績が把握でき、タイムリーな経営判断が可能になるなど、小規模法人にとって多くのメリットがあるものの、時間と労力がかかることが課題となっていた。
そこで今回、同社は弥生会計オンラインによって、小規模法人のこうした「記帳作業負荷」と「タイムリーな経営情報把握」のトレードオフを解消し、「記帳ストレスゼロ」と「タイムリーな経営判断」を可能にしたとしている。
弥生会計オンラインの詳細な内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは岡本氏が会見で語った「会計業務の進化」に注目したい。図に示したのが、その進化のプロセスである。
取引発生から試算表/決算書作成までの会計業務のプロセスにおいて、会計ソフトがまだなかった「会計業務1.0」ではすべてを手作業で行っていた。それが、会計ソフトが使われるようになった「同2.0」では、転記と集計が自動化されるようになった。
ただ、岡本氏によると、2.0になったのはもはや30年前で、むしろ会計業務はそれ以来、大きな進化を遂げてこなかったと指摘する。その「自戒の念を込めて」と語る同氏が強調したのが、今回の弥生会計オンラインを機に押し進める「会計業務3.0」への進化だ。
弥生が考える会計業務の進化
図にあるように、3.0では「(取引成立を立証する書類を指す)証憑(しょうひょう)の電子化」と「入力の自動化(自動仕訳)」が可能となる。これによって、会計業務のプロセスは、証憑の整理から記帳、試算表/決算書作成までを一気通貫で自動化する形となる。