大木豊成「Apple法人ユースの取説」

失敗例と成功例から考える--iPad法人導入のポイント

大木豊成 2015年07月22日 10時48分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

iPad導入がゴールになる

 「野村證券、iPadを8000台導入へ--個人向け営業担当者に配布」、「JR東、「iPad mini」7000台導入--乗務員に配布、輸送障害時の情報を共有」、さらにはメガネの三城がiPadを4000台導入したといった記事を見て、「よし、当社もiPadを全営業担当に持たせるぞ!」と、そんな号令がかかることがある。その多くは経営層、あるいは部門のトップからの指令だ。そして、その指令を実行するのが情報システム部門であることが多い。

 当然、自社と野村證券ではビジネスモデルが違うし、JR東日本とも違う。だから、自社なりの活用を検討する必要がある。しかし、「IT」というキーワードに縛られて、なぜか情報システム部門のメンバーだけで考えなくてはならなくなり、ユーザー部門からせっつかれるが、実際の活用場面をイメージできず、遅々として進まない。こんな経験をした情報システム部門の方がいるのではないだろうか。


 情報システム部門の面々が、自社のビジネスモデルを理解していないことも多い。また、営業部門など他部門の動きを把握できていないことさえ、現実として起きている。

  • 情報システム部門「何をしたいのか分からないから進まない」
  • ユーザー部門「何ができるのか分からないから、答えようもない」

 こういった「お見合い」が起きてしまうのは、何も情報システム部門だけが悪いわけではない。むしろ、経営層がタブレット導入の一連のプロセスを情報システム部門に丸投げしてしまい、報告だけを待って、プロジェクトに関わっていないことに問題があるのだ。

 しかし、では経営層に文句をいうことで解決するだろうか。あるいは、文句を言えば解決するのだろうか。

プロジェクト化してもプロジェクトの本質を理解しないメンバーの存在

 Wikipediaで「プロジェクト」を見てみると「プロジェクトは、何らかの目標を達成するための計画を指す」とある。しかし、タブレットの導入プロジェクトでは、明確なプロジェクトマネジメントが実施されないことが多い。つまり、強い意志を持ってプロジェクトをけん引する人の存在が必要なのだ。

「よし、当社もiPadを全営業担当に持たせるぞ!」

 経営者が号令をかけて、社内でプロジェクトを発足する。多くの場合は情報システム部門が指名され、情報システム部門内でさほど意志もない人が担当になる。iPadのことだが、とりあえず出入りのシステム開発会社に相談する。あるいは、いつもPCを購入している業者に相談する。業者からは必要な台数の見積もりが出てくる。担当者は外部に見積依頼したことで、プロジェクトが進んでいるように勘違いしてしまう。この時点から、だんだんとプロジェクトの目的から遠ざかっていく。

ゴール設定を見誤る

 「何のためにタブレットを導入しますか?」――過去にタブレット導入の相談を受けた企業に、筆者が何度か質問をしたことがある。もちろん、多くの場合は「営業が持ち歩いて、顧客に説明する資料を入れる」「タブレットで見積書を作成して、そのままメール送信できるようにしたい」「メンテナンス要員がタブレットで作業報告をできるようにしたい」「店舗の販売員が、タブレットから在庫補充をできるようにしたい」といった具合に、具体的な活用を考えている企業がある。

 しかし、一方で「分からない」という回答も少なくない。「社長が入れろって言うのでとりあえず」とか「決算期なので予算を使い切る」という企業もある。まあ、決算期なので予算を、という気持ちは分からなくはないが、せっかく導入するのだから、有効活用を考えるほうがいいに決まっている。予算消化だけで持たされた社員は、下手をすると便利になるどころか、荷物が増えて、さらに余計な作業が増えることになる可能性もあるからだ。

ステークホルダーを見誤る

 ステークホルダーというカタカナ語を使うことを嫌がる人も多いことだろう。筆者も、顧客と話す際には絶対使わないカタカナ語のひとつだ。しかし、最近では政府でも使われることが増え、その言葉を知っている人も多いのではないだろうか。日本語では、「利害関係者」と訳されるので、ちょっと堅苦しい印象があるが、簡単に言うと「関係者」のことだ。ただ、「関係者」を狭義にとらえてしまい、自分たちの社内や部署内だけに連絡を入れたり、確認をとったり、ということで済ませてしまうと、肝心な部分で反対を受けたり、あるいはトラブルになってしまうことがある。

 ステークホルダーを「利害関係者」と訳す通りに、「利害」がある、あるいはありそうな人たちすべてをプロジェクトに巻き込むことが重要なのだ。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]