仕事は「組織」ではなく「プロジェクト」で
さて、仕掛けたプロジェクトを成果につなげるには、プロジェクトのテーマに適した能力をもつ「人財」が配置され、なおかつプロジェクトでの活躍が適切に評価される仕組みが必要となる。しかし、残念なことに多くの企業においては、人財が「肩書き」でラベリングされてはいても、「この人はこれができる」という意味での「能力」が可視化されていないために、いざプロジェクトを立ち上げるときに最適な人財が配置できない。
さらに、まだまだ縦割りの階層型組織をベースとした人事制度が一般的なため、組織を越えたプロジェクトにおいて発揮された能力や成果を評価する仕組みがない。
比較的目立つ人財や昇進の速い人財に、適任かどうかにかかわらず白羽の矢が集中し、いくつものプロジェクトを掛け持ちしては大した成果を生み出せず負荷ばかりがかかる。加えて評価指標がハッキリしていないため成長にも評価にもつながらない、という不毛なケースは、筆者もよく目の当たりにする。
プロジェクトも不発、人財育成も不発、メンバーは疲労、という状況が繰り返されては、プロジェクトで物事を動かそうという風土にはなりにくい。
組織ではなくプロジェクトで価値を生み出すというワークスタイルへの変革は、なにも情シスと事業部門に限った話ではなく、イノベーションが喫緊のテーマになっている日本企業そのもののチャレンジだ。
しかし情シス部門も「攻め」に転じる以上、このワークスタイル実現に向けて、自ら声をあげ、動き、果敢に取り組んでいくべきだろう。テクノロジが企業経営の最大のチェンジドライバーになっている今だからこそ、情シス部門の動きがインパクトを生む。
情シス部門の管理指標はこのままでいいのか
最後に、「サービス型情シス部門」になる上で、あわせて避けて通れないのは、部門の管理指標だと筆者は考える。情シス部門のコストは本社の配賦費用で賄われていることが多く、いくら事業部門にいい提案をしようが、いくら成果に貢献しようが評価される仕組みはない。これでは積極的に自らの組織モデルを変革しようとする動機が高まらなくて当然だ。
現在、多くの情シス部門は、コスト予算で管理されているが、それでは必然的に守りの姿勢が強くなるのは自明だ。
攻めの情シスである「サービス型情シス部門」では、予算ありきではなく、プロジェクトごとに投資対効果を明確にし、事業部門からシステム化を含む予算を取ってくる姿勢が必要になるだろう。そして、プロジェクトの成果や事業部門の満足度などを管理指標としていくことが、部門、ひいては部員のモチベーションをドライブしていくのである。
次回は最終回、ビジネスとテクノロジのシナジーから生まれる新しいビジネスのトレンドについて語る。
- 有我篤行 株式会社シグマクシス ヒューリスティック・グループ ディレクター
- 総合商社、外資系コンサルティングファームを経て2008年8月にシグマクシスに参画。人財・組織戦略、イノベーション創出支援、働き方改革など組織の価値創造、活性化のコンサルティングに強みを持つ。商社、電機、運輸、小売など幅広い業界の企業に対して多くのプロジェクト実績を有する。