前回は番号法ガイドラインに記載の技術的安全管理措置が、昨今日本国内で起こっている「標的型攻撃」に対し、全く効力のない対策の例示しか言及されていない点について触れた。また、ガイドライン自体も例示がすべてではなく、環境に応じて必要な対策を考慮するよう促している。つまり、現在のセキュリティリスクに照らし合わせて考慮し、企業側の判断でマイナンバーを守っていかなければならない。
従来の「右に倣え」的なセキュリティ対策ではなく、「我に倣え」のセキュリティ意識を持つ必要がある。番号法ガイドラインの要となる技術的安全管理措置の「外部からの不正アクセス対策」に記載されている例示は、「ファイアウォールの導入」「アンチウイルス対策」「パッチ適用」という最低限の対策しか言及されていない。例示の対策のみの対応だけでは、世界的に繰り広げられているサイバー攻撃に対し、マイナンバーを守ることは到底できない。
マイナンバーを取り扱う人事、経理といった部門に対し、標的型のフィッシングメールなどが届くことは容易に想像できるが、そのメールに含まれるURLや添付ファイルにしても、例示に言及されているような既存のフィルタリングでは脅威を検知できない可能性がある。今後マイナンバーに絡んだ情報漏えいが発生した時点で確実にガイドラインの不足点が追求され、その内容が改定されるだろう。
しかしながら、その被害者とならないよう、しかるべきリスクに対して適切な対策を検討すべきであるにもかかわらず、ほとんどの事業者はその重要性を認識していないように見受けられる。
ではその考えうるリスクとは何なのか。整理すると以下の6つになる。
- 最新型マルウェア アンチウイルスで検知不能、挙動が読めない未知のファイル
- フィッシング ホワイトリスト・ブラックリストに合致しない未知のURL、添付ファイル操作への誘導
- 標的型攻撃 攻撃対象の環境・興味を把握し巧妙に仕組まれるさまざまなベクトルの攻撃
- 内部不正 権限を持つ管理者の成りすましを含む職権乱用・過剰アクセス・不正持ち出し
- ゼロデイ(脆弱性) OS、アプリの未知の脆弱性を悪用した攻撃
- SSL(バックドア通信) 境界線で防御不能な暗号通信内で起こるマルウェアダウンロードと情報漏えい