――データの分析手法とは。
加藤氏 社内に分析部門がありますが、みなさんが思っていらっしゃるほど複雑なことはしていません。使っても多変量解析などの手法で、オープンソースの統計解析ソフト「R」などは使っていません。ニーズも割とベーシックなデータの方が多いですから。基本的には当社で取得しているデータをもとに分析します。アナリストには各競技や選手に詳しいことが求められます。
テクノロジーマネジメント部 配信・運用サービス部 部長 岡本正弥氏
分析する人には、各競技、チーム、監督、選手の特性などを頭にたたき込んで、仮説を持ちながらどういう分析をすれば面白いかを考えることが求められます。たとえば、先日テレビで紹介しましたが、サッカー日本代表チームのトラップから次のプレーまでの時間を分析すると、ハリルジャパンになってからは2秒以内で次のパスが出る割合が70%を超えていて、歴代の日本代表と比較して非常に「球離れ」が速いことがデータに表れています。
ハリルジャパンの特徴を「球離れ」という視点で分析することで実証できるわけです。サッカーに詳しいアナリストが仮説を持って独自の視点でデータを分析することで、そういうことが見えてくる。そのアプローチがデータスタジアムの強みだと考えています。
トラッキングを導入して選手の動きを追うと、ややもすると「たくさん走ってる人が偉い」とか「たくさんスプリント(ダッシュ)している人が偉い」といった観点になりがちです。しかし、あんまり走ってなくてもポジショニングや読みの鋭さによってボールが集まる選手がいます。そのような選手の一例として、中村憲剛選手のデータを扱ったコンテンツを作ったことがあります。これは実際の反響も大きく中村選手の評価の高さを、データで証明できたのではないかと思います。
――データを集めるだけでなく、現場を知っている人が分析することが重要であると。
サッカーデータ&映像分析ソフト「フットボールアナライザー」
加藤氏 スポーツの肌感覚が伝わるようなコンテンツを出す方がファンに楽しんで頂けるということです。もちろん、ビッグデータ分析の結果を組み合わせて、選手の査定やチーム編成に活用しているチームもありますし、そういったアプローチで手伝うケースもあります。それはそれで非常に有用だと考えています。
岡本氏 また、例えば巨人の阿部慎之助選手がヒットを打ったときの配球率であるとか、浦和レッズが失点したときのボールの軌跡などを分析するシステムもあり、そのデータをクラブやチームが、戦術の分析や適用に活用していただくケースもあります。