日本オラクルは7月23日、クラウドアプリケーションを構築するためのPaaS「Oracle Cloud Platform」に新サービスを追加したと発表した。モバイルやビッグデータなどの次世代型だけでなく、統合基幹業務システム(ERP)やデータベース、顧客情報管理システム(CRM)といった基幹系を含め、全システムをパブリッククラウドで構築できるようにするという同社のクラウド戦略に沿ったサービスを新たに提供する。
代表執行役社長兼最高経営責任者を務める杉原博茂氏
取締役で代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)を務める杉原博茂氏は、2015年度第4四半期でクラウド事業の新規受注金額成長率が世界で200%増え、さらに日本では440%伸びるなど、成長の勢いを強調。
2015年に新規獲得したPaasの顧客は1419社に上り、世界累計で1800社に達したとアピールしている。
SoEとSoRが一体化したシステムを提供
具体的な新サービスの内容について説明した副社長で執行役員、クラウド・テクノロジー事業統括の三澤智光氏は冒頭、『キャズム』の著者であるGeoffrey Moore氏が提唱し、IBMもよく引用する概念である「System of Record」(SoR)と「System of Engagement」(SoE)に触れた。
副社長で執行役員、クラウド・テクノロジー事業統括の三澤智光氏
Amazon Web Servicesをはじめとした従来のクラウド、特にIaaS事業者が得意とするのは、どちらかと言えば、Uberに代表されるようなウェブを基盤にした比較的新しいサービス、すなわちSoEだとする。急激なトラフィック増やユーザー数の増加などを前提にしており、それに自動的に対応するオートスケールを中心としたサービス提供が求められる。
一方で、Oracleが得意としてきたのは、ERPなどを含む従来型のシステムであるSoR。「従来型のシステムをパブリッククラウドに載せるとトラブルが起きるという声が多数届いている」(三澤氏)とのこと。
ここで、従来型のIaaSベンダーが得意とするSoE向けと、基幹系を中心とするSoR向けの両方を一体としてクラウド化できることが、オラクルのクラウド戦略の柱になってくる。この日発表したPaaSの新サービスも、この考え方がベースになっている。
その上で発表したのは、下の写真の青で表示した製品群。データベース専用機「Exadata」の機能をクラウドで利用できるようにする「Oracle Database Cloud」、PaaSではビッグデータ処理をクラウドで利用できるようにする「Oracle Bigdata Cloud」、リッチなモバイルアプリケーションの基盤になる「Oracle Mobile Cloud」、SaaS間の連携基盤となる「Oracle Integration Cloud」、ビジネスプロセス連携と自動化を図るための「Oracle Process Cloud」だ。
青で示したのが、この日発表したクラウド製品群
Oracle Cloudが提示する主なメリットは次の4つ――事前統合された包括的なソリューションであること、自動化による初期設定や管理コストの低減、効率化された高い開発生産性、総所有コスト(TCO)を削減できること。インフラ、ミドルウェア、アプリケーションといったレイヤ間で、「初期設定など構成をせずにシステムがつながるメリットは大きい」(三澤氏)とする。
クラウド事業の収益性について杉原氏は「データベースというコア事業を維持しながら、クラウドでの新サービスやアプリケーションを追加し、総合的に収益を上げていく」と話す。一時的な大きな売り上げではなく、月額費用といった形の収入で、「インクリメンタル(徐々)に増加するのがクラウドの特徴」だとし、長期的な視点でのクラウド事業の成長性に期待していることを強調した。