IHIは、グループ主要拠点で新たにクラウドサービスを活用したコミュニケーション基盤を構築、本格的な運用を開始した。NTTコミュニケーションズ(NTT Com)が7月23日に発表した。
IHIでは、「グループ経営方針2013」で世界の大きな潮流(メガトレンド)である「スマートな社会インフラ」「新たな高度情報化」「複雑化する世界経済」に対応するため、「既存事業間および既存事業と周辺事業を『つなぐ』」「製品・サービスとICTを『つなぐ』」「グローバルな規模でお客さまやパートナーとIHIグループを『つなぐ』」という3つの“つなぐ”を強化し、顧客価値創造の実現を目指している。
この“つなぐ”を実現するベースとなるコミュニケーション基盤は、これまでオンプレミス型のPBX(構内交換機)をベースに拠点ごとに異なる複数のサービスで構築していたため、拠点や人員の増減に対する柔軟な対応が難しい状況だった。工場では、現場業務や会議などで席を外すことが多く、工場内にいる社員と連絡を取り合うのに時間と手間がかかり、スピーディーなコミュニケーションを取りづらいことが課題となっていた。
こうした課題を解決し、総所有コスト(TCO)削減にも貢献するものとして、新たにクラウド型コミュニケーション基盤の導入が検討された。IHIでは、まず一部の海外拠点などへの導入し、その結果が良好であったことを受けて、5月の愛知事業所での利用開始を皮切りに、7月からグループ会社の一部にも展開、本格的な運用を開始した。
新たなコミュニケーション基盤は、NTT Comのクラウド型コミュニケーションサービス「Arcstar UCaaS」を活用し、IHIグループの外線と内線の音声通信のすべてを提供するクラウド型PBXに移行した。導入や運用のコストや通信料を大幅に削減し、国内外シームレスな通信環境を実現できると期待される。
IHIの試算では、これまで利用してきたオンプレミス型PBXの更改費用とクラウド型PBXの導入費用を比較したところ、約30%の費用削減が可能と算定。設備の運用コストについても、電話設備の運用保守作業や回線の設定変更作業が不要になるため、約25%の費用削減が見込まれている。高額なPBXを固定資産として保有する必要がなくなることから、自己資本利益率(ROE)の向上にも貢献するという。
今回のコミュニケーション基盤では、Arcstar UCaaSとモバイル端末を内線として利用できるNTTドコモの「オフィスリンク」を連携させ、外線と内線の双方に発信できるモバイル端末を活用することで“1人1番号制”を実現できるようにした。これにより、代表電話からの取り次ぎを不要とする効率的なコミュニケーションが可能になる。モバイル端末の導入では、従来利用されていたPHSから移行しており、これによってオンプレミス型のPHS用設備の維持更新も不要となった。
外出先でも内線番号を使って無料の内線通話ができることで、外出先からでもオフィスにいるかのようなコミュニケーションが可能となり、ワークスタイルの変革にも大きく貢献すると説明。企業向け外線IP電話サービス「Arcstar IP Voice」の利用で国際通話を含む外線通話料を大幅に削減できているという。
構成イメージ(NTT Com提供)