谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」

IoTビジネスの成功要因はドメインやモノのノウハウ - (page 2)

谷川耕一 2015年07月31日 11時41分

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 多くの日本の製造業では、IoTもIndustrie 4.0も現時点では実践していないだろう。しかし、すでに得意の「カイゼン」の中では工場内や関連するサプライヤーとは連携し最適化に取り組んでいる。カイゼンによる最適化がIndustrie 4.0と異なるのは、必ずしもデータを活用し切れてはいない点だろう。つまりは、まだまだデータ活用という変革の余地が日本の製造業にはあるとも言える。

 一般的に、Industrie 4.0への対応で日本は出遅れていると言われる。これは技術的な面で立ち後れていると言うよりは、文化の違いのほうが強いのではと山本氏は言う。すでに日本ではカイゼンが成功してきた経緯と経験がある。なので、新しいIndustrie 4.0という改革にすぐに乗れないのだ。とはいえ日本企業の多くは、状況が差し迫れば率先してそれに対処する。Industrie 4.0への対応をより強く求められれば、対応が一気に加速する可能性は高い。

 Industrie 4.0に対応すれば、これまでつながっていなかったサプライヤーともつながれる。結果的にはそれでビジネスのチャンスは広がり自分たちが外の世界に打って出られるようになる。これは逆に考えれば、自分たちが守ってきた領域が他社から攻められようになることでもある。

 攻められると日本の製造行は負けてしまうのか。おそらくそんなことはない。日本の製造業が持っている素材には競争力があるからだ。そこにIoTが入ってくれば、素材の力がより強くなるはずだ。さらに、これまで日本が世界市場に打って出る際には言語の壁もあったが、IoTの世界では言語は介在しないのでそういった障壁で足踏みすることもない。

IoTのビジネスではSOAでの経験が生きてくる

 IBMは、製造業のIoTによるビジネス変革の動きにどのように関わるのか。

 「われわれのサービスの切り口は、基本的にはサービス指向アーキテクチャ(SOA)になります。IBMはこれまで死ぬほどSOAをやってきました。サービスの粒度をどうしたらいいのか、サービス基盤をどう構築すればいいのか。そういったノウハウが豊富に蓄積されています。さまざまな業種、業態でSOAを徹底的にやってきた人間が、IBMにはたくさんいます。なので、われわれにはIoTのビジネスにおいても大きなチャンスがあると思っています。IoTによるビジネスの変革は、製造業が持っている機器のノウハウがないと参入できないものではありません」(山本氏)

 IBMは、つなぐことで新たな価値を生み出すのはSOAで経験済み。IoTの技術要素をたくさん持っていることよりも、多くのSOA案件を実践したノウハウがあり、さまざまな業種業態のドメインに関する経験と知識がある。それらが、IoTのビジネスにおいては有効な武器になるのだ。

 山本氏はIoTの定義には2つの種類があると言う。1つがデータソースになるIoTだ。これはたとえばスマートメータなどからデータを集め、そのデータを分析し活用することを想像すればいいだろう。今後はデータソースになるIoTも、エッジ側である程度処理をし意味のあるデータだけをクラウドなどに渡すようになる。

 もう1つがAPIを持つIoTだ。こちらは、モノがAPIでアプリケーションとつながり新たな価値を提供する。アプリケーションとモノがシームレスにAPIを使って会話する。さまざまなアプリケーションやモノがAPIでつながり新たな価値を生み出すソリューションを、IBMではAPIエコノミーと呼んでいる。

IoTが進めばマルチベンダーで異機種間接続の世界がやってくる

 どちらのIoTであっても今後利用シーンが増えていけば、今までのITの世界以上にヘテロなものが稼動する状況がやってくる。つまりはマルチベンダーで異機種間接続の世界だ。


日本IBM ソフトウェア事業部 技術理事 兼 グローバル・エレクトロニクス・インダストリー CTO 山本 宏氏

 「これはITの世界にCORBA(Common Object Request Broker Architecture)が出てきた時の状況と似ています。ITというサイバー空間の中でも異機種間接続はかなりタフで挫折することもありました。今度はIoTでそのスコープが『モノ』の世界に入ってきます」(山本氏)

 当然ながらIoTでの異機種間接続は相当タフな世界となるだろう。とはいえ、これはITの世界ではすでに通ってきた道でもある。技術的にはつなげられないわけではない。しかし、何でもつながるようにはなかなかならないだろう。実際のモノの世界には、さまざまなギャップがある。たとえばコネクティブカーも実際にはメーカーごとにサイロ化しており、他メーカーの車とつながる状況にはない。

 マルチシング、マルチサーバ、マルチアプリケーションでつながる理想的なIoTの実現には、まだまだ相当時間がかかる。最初は、こことここだけがつながるといった限定的なIoTから始まる。それでもさまざまなメリットが新たに生まれるはずだ。重要なのは、徹底した標準化で何にでも容易につながる世界を目指すことではないということ。つながることで、新たな価値を生み出すことこそが目的だ。

 価値が見いだせるシナリオが見えるならば、つなぐ方法はIoTでなくてもいい。場合によってはすり合わせ的なカイゼンの延長でもいいかもしれない。鍵となるのはおそらくデータだ。データをいかに正確に集め分析できるようにし、新たな価値のために活用できるか。そのためにはどういったつなげ方がいいかを考えるべきだ。それはIntranet of Thingsかもしれないし、Internet of Thingsのほうが効率的かもしれない。

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