本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米IBMのPat Toole IoT担当ゼネラル・マネージャーと、ファイア・アイの茂木正之 執行役社長の発言を紹介する。
「企業はIoTによってビジネスの新しい価値を創造することが可能になる」 (米IBM Pat Toole IoT担当ゼネラル・マネージャー)
米IBMのPat TooleIoT担当ゼネラル・マネージャー
日本IBMが先ごろ、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)分野に向けた取り組みについて記者説明会を開いた。冒頭の発言は、米IBMのIoT事業責任者として会見に臨んだPat Toole(パット・ツール)氏が、企業にとってのIoTのインパクトについて語ったものである。
米IBMは3月、IoT事業に今後4年間で30億ドルを投資すると発表し、同事業に注力していく経営の意思を明確に示した。併せて、専門組織の設立、および顧客やビジネスパートナーによるIoTソリューションの構築を支援するクラウド型のオープンプラットフォームを設けることも明らかにした。
これを受けて日本IBMも、7月1日付けで専門組織「IoT事業開発推進室」を新設。主にコンサルティング部門の業界知識や研究部門の知見を活用して、IoT活用を検討する顧客への導入コンサルティング、IBMの実績をもとに新たなソリューションの開発、および顧客でのプロジェクト推進を支援するとしている。
Toole氏は会見で、「企業はIoTが生み出すビッグデータを有効活用すれば、これまで難しかったリアルタイムな洞察が可能になり、あらゆるものごとについて品質を向上させることができるようになる」と説明。冒頭の発言はこの流れで出てきたものである。
IoT事業におけるIBMの差別化ポイントについては、「ビッグデータを有効活用できるアナリティクスツールを豊富に取りそろえている。さらに、当社ならではのコグニティブコンピューティングであるWatsonも利用できる」ことを挙げた。
Toole氏の説明で筆者が最も印象深かったのは、IoTを活用することでビジネスがどのように変わるかという点についての保険会社の例え話だ。
「これまで保険会社は、統計に基づいてさまざまな保険を提供してきたが、IoTによるリアルタイムアナリティクスが使えるようになると、統計よりも人それぞれの実際の行動をベースとした保険が主流になるのではないか」
これについては、例えば自動車保険で、運転する人のブレーキを使用する頻度に応じて契約内容を段階的に設定するといったことが当てはまるだろう。