人間の機械化と五感の拡張

人工知能やロボットなどによる「機械の人間化」が進む一方で、「人間の機械化」つまり、人間のIT化による人間拡張の動きが進みだそうとしている。
「機械の人間化と人間の機械化」では、拡大するウェアラブル市場を紹介し、スポーツ分野などで活用が進む着衣型ウェアラブルシャツ、スマートコンタクトレンズ、電子皮膚、ウェアラブルロボット(サイボーグ型ロボット)などの動向を解説した。
後半で紹介した2016年10月にスイスで開催される最先端のロボットやウェラブルデバイスを装着した障害者スポーツ選手たちが競う競技会「サイバスロン」は、注目すべき大きな動きとなるだろう。
「五感を刺激、拡張するテクノロジ」では、触覚や視覚、聴覚、味覚、嗅覚といった人間の五感をテクノロジで刺激、拡張するという動きについて、事例などを交えながら動向を紹介した。

2本の腕を持つ人間が腕を4本にする「エクストラアーム」
触覚の拡張では筋電義手となる「Handiii(ハンディ)」や2本の腕を持つ人間が腕を4本にする「エクストラアーム」、視覚の拡張では3Dバイオプリンティング技術による人間の眼球を作り出すプロジェクト「EYE(Enhance Your Eye)」やバーチャルリアリティ(仮想現実:VR)の映像が楽しめるヘッドマウントディスプレイ、嗅覚の拡張では「匂い」で目を覚ましてくれる目覚まし時計「SensorWake」など、人間の五感を拡張するさまざまな取組みが進んでいる。
2045年の未来の社会への対応
発明家・未来学者 Ray Kurzweil氏の予測では、2029年に「人工知能は人間と同等の能力を持つようになり、2045年には、コンピュータの性能は現在の約264万倍の性能にコンピュータの能力が全人類の知能を上回るシンギュラリティ(技術的特異点)に達すると予測している。
Ray Kurzweil氏の予測には、賛否両論があるが、これまでとりあげてきた人工知能やロボット、人間の機能拡張などの動きは、速いスピードで進展しており、未来社会に大きな変革をもたらすことは間違いないだろう。
スマートマシンは、「ITの歴史において最も破壊的なものになる」という予測もあるように、すでに起こった未来社会のこれからを、どのように理解し、取り組んでいくかが、重要となっていくだろう。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開 発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。