Gartnerがx86サーバ仮想化インフラストラクチャに関する2015年の「Magic Quadrant」報告書をリリースした。VMwareとMicrosoftは、Gartnerが「リーダー」と定める右上の象限のポジションを維持した。「特定市場指向型」に分類されたベンダーは、CitrixとHuawei(ファーウェイ)、Odin、Oracle、Red Hatだ。
提供:Gartner (July 2015)
ベンダーの最上位ではあるがさまざまな課題に直面しているVMware
VMwareは依然としてx86仮想化分野で誰もが認めるリーダーだが、クラウドインフラストラクチャサービスの普及拡大や市場飽和、Microsoftとの競争の激化などにより、同社にプレッシャーがかかっていることは明白である。Gartnerは、「vSphere」と「Hyper-V」の比較について問い合わせる顧客が増えていると言及している。
一部の大企業はVMwareからMicrosoftのHyper-Vに移行しているが、Hyper-VからVMwareに切り替えている企業もある。VMwareはOracleとの競争の脅威にもさらされている。顧客は、ミッションクリティカルなデータベースワークロードを、同種の認定済み仮想化プラットフォームで実行することを望んでいるからだ。「OpenStack」ベースのプライベートクラウドとコンテナの普及拡大も、エンタープライズ分野でのvSphereの採用に影響を及ぼしている。Red Hatは、仮想化されたLinuxワークロードの実行に適したプラットフォームとして認知されることを目指している。
Gartnerは、クラウドネイティブのワークロードが「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」などのIaaSプラットフォームに移行している傾向も浮き彫りにした。これはVMwareにとって懸念すべき分野だ。VMwareのハイブリッドクラウドプラットフォーム「vCloud Air」は、Amazonなどのプロバイダーと比べると、まだ同市場で存在感を発揮できていない。
提供:VMware
Azureの機能でHyper-Vを補強するMicrosoft
今回の報告書は、Microsoftが「Windows Server」の次期バージョン(Hyper-Vの新バージョンを含む)の準備を進める中でリリースされた。2014年と比較すると、MicrosoftのHyper-Vは右上の象限の中でも数段階格上げされた。これは、同社が仮想化戦略で進歩を遂げていることを示している。Hyper-Vが同OSや管理ツール群と強固に統合されることで、顧客は大規模なワークロードの展開と管理を容易に行えるようになる。同ハイパーバイザはWindows Serverにバンドルされているので、コストはほぼゼロだ。
「Azureのような機能を実現するMicrosoftの取り組みは、Azureを利用して、オンプレミスのHyper-VとAzureサービスの両方を管理することに関心を持つ企業を引きつけている。特にAzureとの親和性が理由で、Microsoftベースの開発チームではHyper-Vを使うことに対する関心が高まっている」(Gartner)
Azureパブリッククラウドと高い互換性を持つプライベートクラウドプラットフォームを構築するMicrosoftの戦略は、功を奏している。先頃発表された「Azure Stack」は、その方向への第一歩だ。戦場が単純な仮想化からプライベートクラウドへと徐々に移行する中、Microsoftはパブリッククラウドプラットフォームとプライベートクラウドプラットフォームの間のギャップを縮めることで、ハイブリッドクラウド戦略を強固なものにしようとしている。
かつては「Windows」限定ハイパーバイザと呼ばれたHyper-Vに、Linuxとの互換性を持たせるように、Microsoftは投資を行ってきた。このことは、同社が異種環境を利用する顧客を新たに獲得する一助となっている。Gartnerは、「Hyper-Vは、Azureに関心があるものの、オンプレミスの展開も必要な開発チームの間で、より大きな成功を収める可能性が高い。MicrosoftがAzureとの親和性をさらに強化し、将来のリリースでWindowsコンテナをサポートするようになれば、開発チームの成功は今後も拡大し続けるだろう」と語っている。