こうした落とし穴は20年以上前から存在している。5年前や10年前と比べて、今は何が違うのだろうか。メインフレームの性能に強く依存する業界(特に金融や保険、ヘルスケア)が、激しい技術革新の転換期にあるということだ。
筆者も数年前、顧客として面倒な経験をした。自動車保険会社に、筆者が契約しているプランに娘をドライバーとして追加する料金の見積もりを頼んだところ、とんでもなく高い金額を提示された。しかし、オンライン検索してみると、競合の自動車保険会社からその半額以下の見積額が返ってきた。何度か電話をかけて、別の保険会社に乗り換えると脅しをかけたところ、筆者の契約プランは今もメインフレームに保存されており、そのメインフレームは他社と張り合うような料金を提示する機能を備えていないことが分かった。より安い保険料で契約するため、筆者は古いプランを完全に解約して、新しいシステムで新しいアカウントを作成しなければならなかった。実際、Dooley氏によると、保険業界は「古いCOBOLプログラムの巨大なユーザーだが、現在は、顧客がサービスのモバイルやクラウドへの移行を余儀なくさせている」という。ほかの大半の顧客は筆者のようにレガシーシステムを使用している保険会社をせかすことなく、単純に別の保険会社に乗り換えたはずだ。
Dooley氏は簡単な解決法を提示していない。なぜなら、そんなものは存在しないからだ。問題を解決する作業は、アプリケーションごとに行う必要があり、それには時間がかかる。クラウドコンピューティングやAPIベースの開発によって、デジタルな領域への移行を加速させる方法がいくつかもたらされるだろうが、同氏は、「それはAPI自体のレガシーの問題が発生しないようにすることができればの話」と忠告する。解決法をもたらすことができるのは、上層部のみだろう。ITやビジネスのリーダーは、「より依存の少ない小規模なシステム、ソフトウェアの継続的な評価、カスタマイズ性の軽減」に献身的に取り組む必要がある。
組織には、その移行を実行する決意が必要だ(投資することも)。ITリーダーやITプロフェッショナルは教育者、エバンジェリスト、そしていわば工作員となり、常に技術革新の波の先を行けるように、新たに投資し、新しい方法でさまざまなことを実行するよう、会社側をうまく言いくるめなければならない。ことによると、自らが技術革新の一端を担う必要もあるかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。