2030年の未来予測
2015年のICTの現状に入る前に、特集の最後にある「2030年の未来像」について触れる。ここまでで見てきたように、ICTはそれまでの技術や社会環境を元として次の段階へと移行してきた。このため、現在の技術を見ていくことで2030年の長期的な像を描いてみるという試みは興味深い。
基本的な技術の進化に関しては、まず端末は高機能化・小型化が進展してさまざまな種類のデータを扱えるように発展してきた。ネットワークについてはデータ伝送速度が指数関数的に向上している。コンピューティングに関しても「ムーアの法則」にのっとればCPUの演算速度やHDDの記録密度は指数関数的に向上している。
これらを踏まえて、具体的な技術について整理する。まず端末では、Internet of Things(IoT)というセンサ技術を取り入れた「インターネットにつながるモノ」がさまざまな分野に拡大している。
ネットワークは、IoTなどが生み出した大量のデータがリアルタイムで流通する基盤となる。コンピューティングは、ネットワークで流通する大量のデータを処理する基盤となる。特に、非構造化データを処理する手段として、現在はディープラーニングなどが発達しており、自然言語、画像解析などへの応用が進んでいる。

ディープラーニング(深層学習)のイメージ出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)
これらの流れをより活用するためには、いくつかの方策が重要だとしている。1つが高速なネットワーク基盤の構築、次がIoT端末が自律的に動くことを可能にするプラットフォームの構築、3点目が「社会全体のICT化」に対応したセキュリティ・耐障害性の強化である。
2016年度からの5年間をめどとした総務省情報通信審議会情報通信技術分科会技術戦略委員会の「新たな情報通信技術戦略の在り方」の中間報告書(案)では、まず、データ解析をフィードバックしたIoT端末の自律的な制御が発展することを期待した上で、センシング技術で「社会を観る」、データを広域に収集して「社会をつなぐ」自動制御により「社会(価値)を作る」というサイクルを回す「社会全体のICT化」の推進を目指すことを提案した。
以上の技術進化や社会変化を踏まえて、有識者へのインタビューも掲載されている。

ソーシャルICT革命推進に向けた重点研究開発分野出典:「平成27年版情報通信白書」(総務省)