アプリケーション性能管理(APM)ツール「AppDynamics Pro」は、“ビジネストランザクション”の構成とパフォーマンスを可視化し、各トランザクションのパフォーマンス低下が企業の収益にどの程度影響するのかを分析するソフトウェアだ。
ここでビジネストランザクションとは、例えばECサイトのケースでは「ログイン」「カタログ閲覧」「カートに追加」「カートから削除」「購入」などユーザーの操作に対するシステム側の処理を指す。
‟ユーザーが商品をカートに追加した‟というビジネストランザクションがあったとする。AppDynamics Proを使うと、その処理に関係するアプリケーション、サーバ、データベースの情報を取得し、処理フローを自動的に可視化する。ビジネストランザクション自体に性能と同時に、処理フロー上のアプリケーション性能やサーバ間の処理性能も監視しており、例えば「カートに追加する」操作に遅延が発生した場合には、どのアプリケーションやサーバがボトルネックになっているのか、ドリルダウンして原因を究明することができる。パフォーマンス性能の平常状態を学習し、アラートを出すしきい値を自動設定する機能も備える。
この仕組みを実現するために、AppDynamics Proは、各ビジネストランザクションでのネットワークプロトコルにタグを付与し、影響するアプリケーション、サーバ、データベースにエージェントをインストールする。タグをトレースすることで、オンプレミスやクラウド、複数アプリケーションにまたがり、ビジネストランザクションの処理フローを可視化できる。また、各エージェントがアプリケーションやサーバのパフォーマンス性能の情報を取得する。

「AppDyamics Pro」でビジネストランザクションの流れを可視化
米AppDynamics 創業者 兼 最高経営責任者(CEO)のJyoti Bansal氏は、「現代のクラウドを中心としたシステムの全体像を見たとき、ITインフラはコモディティ化している反面、アプリケーションレイヤはより複雑化している。AppDyamics Proは、ビジネストランザクションのトレースによって、アプリケーション環境を把握できることにフォーカスして設計した」と説明した。
さらにAppDyamics Proは、ビジネストランザクションのパフォーマンス低下が、お金に換算してどの程度の損失につながったのか、レポートを作成する機能を実装している。「ユーザーに対して、AppDyamics Proが‟今日1日で、優良顧客がモバイルアプリの性能の悪さに起因して離脱したことにより、何ドルの売り上げを失ったのか?“といった質問をする。ユーザーが回答した数字をもとに、パフォーマンス低下のビジネスインパクトについてのレポートを自動作成する」(Bansal氏)

パフォーマンス低下による売り上げへの影響を分析
リセラーパートナーにもメリット
同社のビジネスは好調だ。2014年に1600ユーザーだったAppDyamics Proの顧客数は、2015年に2400ユーザーに拡大する見込みだ。Bansal氏によれは、「新規ユーザーは、ITインフラ管理システムからの乗り換えが大多数だが、AppDyamics Proのビジネスインパクトを分析する機能に着目してBIツールから乗り換えるユーザーもいる」という。
国内での導入企業数は現在約60社。同社 カントリーマネージャーの内田雅彦氏は、日本市場での拡販戦略について、「日本企業は、米国企業のように自社内にソフトウェアエンジニアを置かず、アプリケーション開発はSIerに発注する傾向がある。国内では、SIerとパートナーになってAppDyamics Proを販売していく」と説明した。
内田氏は、SIerにとってもAppDyamics Proをリセールするメリットがあると強調する。SIerは、システム開発を受託した顧客企業にAppDyamics Proを導入することで、自社が手掛けたアプリケーションのパフォーマンス性能を把握することができる。さらに、大規模システムの一部を受託したケースにおいて、パフォーマンス低下などの障害が発生した際に、それが自社の手掛けた部分に起因するものなのか否か、切り分けることが可能になる。
AppDynamics 創業者 兼 CEOのJyoti Bansal氏(右)とカントリーマネージャーの内田雅彦氏