日本航空(JAL)やNTTコミュニケーションズ(NTT Com)、東レの3社は8月17日、“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”の仕組みを活用した安全管理システムの共同実証実験を開始した。空港での屋外作業者が安全に働ける環境の整備を目指す。
実証実験は、東レとNTT Comが協働する「機能繊維素材“hitoe”を活用した作業者安全管理サービスの実用化に向けた取り組み」の一環。hitoeはNTTと東レが開発した、着衣するだけで心拍数や心電位を取得できる機能繊維素材。ナノファイバー生地に導電性高分子を特殊コーティングすることで生体信号を高感度に検知するという。肌へのフィット性や耐久性も備えているとしている。
(NTT Com提供)
空港の地上エリアでは、夏の屋外での作業環境は厳しく、事故防止の観点からも作業者の体調管理や安全確保が必須となっている。実証実験では、この課題を解決するために、JALはクラウドベースの安全管理システムを開発したNTT Comと共同で、東レが開発したhitoeウェアやトランスミッターなどを活用し、沖縄県那覇空港の地上エリアでの作業者の心拍数などのバイタルデータをリアルタイムに取得、分析、遠隔モニタリングの有用性を検討する。
空港で荷物の輸送や航空機誘導などの地上支援業務である“グランドハンドリング”の従事者を対象として暑さ対策に関する検証を開始し、続いてほかの空港で暑さ対策以外の体調管理(熱ストレス、リラックス度、運動強度、消費エネルギーなど)の検証を進めていく。
(上から)実証実験、対象作業者、システム管理画面のイメージ(NTT Com提供)
東レがNTT Comと協働して事業化を目指す作業者安全管理サービスは、主にhitoeウェア、トランスミッター、安全管理システムから構成。hitoeウェアから取得できるバイタルデータの活用に加え、トランスミッターに内蔵した三軸加速度計で着用者が転倒状態にないかも推定できる。今後、GPSやビーコンの活用で着用者の位置情報取得機能の開発も検討し、労働環境以外にも福祉介護施設や自宅での高齢者見守り分野などでの活用を目指す。
安全管理サービスのイメージ(NTT Com提供)
JALは今後、実証実験の結果を踏まえてシステムの導入を検討する。東レは幅広い業界や職種での導入を目指し、2015年度中にサービスの事業化を図っていく。