Windows 10についていけない銀行の情シス
7月29日に、マイクロソフトのWindowsの最新版、Windows 10への無償アップグレードが開始され、Windows 8に困っていたユーザーなどから歓迎を受けた。しかし、多くの銀行では、Windows 10へのアップグレードを推奨していない。
みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、あおぞら銀行ではWindows 10には(2015年8月17日時点で)対応していないとしており、三井住友銀行は対応に関する記載すら見当たらない状況だ。メガバンクのインターネットバンキングは、前々から法人向けにはMacに対応していないことも指摘されているが、今回は日本の法人でもっとも使われているWindowsの最新版への対応が遅いことが問題視されている。
銀行のシステムは、いわゆる情報システム部門というよりも、システム子会社や外部ベンダーが対応しているのが実情ではあるが、システム担当から委託を受けているということは、情報システム部門としての役割を担当していることになる。その情報システム部門は、内部のシステムのみならず、顧客向けのシステムでこのような状態というのは、果たして役割を全うできているといえるのだろうか。
最新のWindowsにいち早く対応し、さらにMacにも対応する。当然、iOSなどのモバイルOSに対応していくのも必要なことだと思う(Androidはセキュリティの問題があるので別の議論があるが)。
「友達にはデーターセンタの構築をさせない」
米Amazonが運営するクラウド基盤であるAmazon Web Service(AWS)では、「Friends don't let friends build data centers(友達にはデーターセンタの構築をさせない)」と書いたTシャツを配布したことがある。友達にデーターセンタの構築をさせたくない、そんな面倒な思いをさせるのは嫌だと思っているのに、顧客に構築させるのは何事か、という皮肉を文字にしたものだ。
クラウドサービスが登場した頃は、セキュリティに対する懸念を口にする人が多かったが、それはクラウドサービスを理解していなかったことに起因することが多かった。現在は、本当にセキュリティを考えるのであれば、特に中小企業の場合は自社で構築するよりも、外部のクラウドサービスを利用するほうが安全であり、かつ低コストになる場合が多い。そう考えると、自社内に高コストになる情報システム部門を抱えるメリットはどんどん薄れていく。もちろん社内にシステムを司る人、もしくは部門が必要にはなるが、何がどうなっているかを理解していれば良いので、必ずしも情報システム部門でなくても構わないと言える。
自社の事業を知らない情報システム部門の苦悩
「タブレットを導入しても、ユーザー部門(営業等)がどう使いたいのか分からない」--。大企業の情報システム部門の方から、こんな言葉を聞いたことがある。しかも、一度や二度ではない。営業の現場に行ったことがないのだから、当然といえば当然だろうが、はたしてそれでいいのだろうか。
現場に行ったことがなくても、社内でヒアリングするなど、積極的な行動がない限り、いつまで経っても「情シスは面倒くさい」という存在でしかなくなる。保守・運用は大事な仕事ではあるが、そこから新たな評価を得ることは難しい。いや、無理ではないだろうか。