MicrosoftからLinuxに乗り換えたドイツのある都市で強い影響力を持つ2人の議員が、「Windows」への回帰を求める運動を展開している。
彼らはミュンヘン市の保守的なキリスト教社会同盟(CSU)政党の議員で、自分たちのノートPCにインストールされたカスタムバージョンの「Ubuntu」は「使いにくい」うえ、「用途も非常に限定的」だと評している。
ミュンヘン市のIT委員会の上級委員である彼らは書簡の中で、Dieter Reiter市長に対し、LinuxベースのOSを排除して、「Microsoft Office」を含むWindowsをインストールすることを検討するよう求めている。
同市は何年もかけて約1万5000人の職員が「LiMux」(カスタムバージョンのUbuntu)などのオープンソースソフトウェアを使用するよう移行させた。これにより、同市は1000万ユーロ(約1100万ドル)以上を節約できたとしている。
今回のこの訴えは、Reiter市長の2014年のコメントに続くものだ。同市長はそのとき、オープンソースソフトウェアは「プロプライエタリなITベンダーのソリューションに後れをとっている」と述べた。
同市長に宛てた書簡の中で、市会議員のOtto Seidl氏とSabine Pfeiler氏は、2014年に議員らのために購入されたノートPCを問題視した。それらはハイスペックマシンであるにもかかわらず、ワープロやビデオ通話といった単純なタスクに利用できない、と両氏は述べている。
Seidl氏とPfeiler氏は書簡の中で、「テキスト編集用のプログラムや『Skype』『Office』がインストールされていないので、普通に使うことができない」と言及している。
両氏は、「これらの端末の購入に既に多くの経費がかかっている。この問題が原因で、多くの町会議員は自分の個人用ノートPCを使っている」と主張し、「購入された端末の多くは使われなくなっている」と付け加えた。
両氏は議会に対し、「それらのノートPC向けに、OfficeとともにWindowsのライセンスを購入」する手段を講じることを検討するよう提案した。
Intelの「Core i7」とSSDを搭載するそれらのノートPCには、LiMux OSがインストールされている。このLiMuxは、「Kubuntu 12.04」のカスタムバージョンでミュンヘン市が開発したものだ。
両氏が書簡の中で同OSにはワープロソフトウェアがないと不満を述べた一方で、ミュンヘン市の広報担当者は、それらのマシンには、オープンソースのオフィススイートである「LibreOffice」が標準でインストールされているとしている。
同OSにSkypeをインストールすることも可能だが、広報担当者によると、同議会のIT部門はSkypeが安全であると評価していないという。
議員たちは、「ユーザー権限がないため、それらのマシンの用途が限定される」ことについても不満を訴えている。
仮に議会が議員の不満を聞き入れた場合、議員のために購入された62台のノートPCにWindowsとOfficeがインストールされることになる。
Otto Seidl氏は自身のノートPCの問題について説明するよう求められたが、その要請には応えなかった。しかし、LiMuxに対するSeidl氏の不満は、同氏の見解が以前と変わったことを意味している。
Seidl氏は2014年、ドイツのITメディアHeiseに対し、自分は「LiMuxの擁護者」であり、Microsoftは「ITの楽園ではない」と述べている。さらに、ITコンサルタントで「UNIX」プログラマーでもあるSeidl氏は、Josef Schmid副市長が議会のIT部門を批判したことについて、個人の意見にすぎないと述べた。
この書簡に対して、Reiter市長はまだ正式には対応していない。これらの議員が不満を表明しているにもかかわらず、LiMuxに対する不満が広まっていることを示す公的な兆候はない。同市の広報担当者はかつて、議会内でのLiMuxに対する不満の度合いは異常なものではなく、問題視されることが最も多いのはオープンソースのオフィススイートと外部の組織が使用するものとの間に互換性がないことだ、と語っている。
Reiter市長は2014年、議会の未来のITに関する報告書の作成を命じた。それには、どのOSとソフトウェアのパッケージ(プロプライエタリとオープンソースを含む)が最も費用対効果に優れているのか、というテーマも含まれている。調査は2015年末に開始される予定で、調査結果は2016年後半に明らかになる見通しだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。