――Nokiaの社風、バリューとは?
われわれは150年の歴史を持ち、事業も変わってきた。だが、仕事への姿勢、オープンで尊敬を重視する姿勢は変わっていない。2014年にデバイスとサービスを売却した後でわれわれのバリューを振り返ったときに、80年代、90年代も同じようなバリューがあったことがわかった。その際に具体的に、Respect(尊敬)、Achievement(達成)、Challenge(チャレンジ)、Renewal(再生)の4つの言葉で定義した。このバリューはNokiaのどのオフィスでも徹底している。
――MVNOとの競争、一部サービスでのOTTとの競争など、顧客である通信事業者を取り巻く環境は厳しい。通信事業者はどのようにビジネスを変えていくべきなのか。Nokiaの見解は?
通信事業者は大きな激動が続いており、世界的なトレンドとしてピュアなモバイルプレイヤーとして存続するのは難しくなっている。日本のNTTドコモはNTTがあり、KDDIも固定がある。ソフトバンクはコンテンツ事業を持つ。Verizonは固定と無線、AT&TはDirecTVを買収、Vodafoneもケーブル企業を買収している。このトレンドは明らかで、今後10年でモバイル分野のCAPEX(設備投資)の7割がこれらコンバージド型プレイヤーになると予想している。
”ダムパイプ”といわれてきたが、モバイルネットワークは社会のインフラであり、パイプを提供するのは悪いことではない。だがその上にあるプラットフォーム、プラットフォームの上のアプリケーションから利益が生まれており、ここに拡大する動きもみられる。チャンスとなり得るのがIoTだ。自動車、ヘルスケアなど垂直業界がIoTを展開できるプラットフォームを提供するというもので、例えばフランスOrangeは大規模なヘルスケア戦略を発表しており、AT&TやSprintは自動車業界向けで展開する。2025年には500億台のデバイスがつながると予想されている。IoTは事業者がパイプ役から脱出するチャンスとなるだろう。
われわれはこの分野で事業者を支援するために、自動車、公安、ヘルスケア、スマートシティなど9分野を定義しており、事業開発をすすめている。例えば自動車では、すでに大手メーカーと提携しており、HERE、基地局側で実装してサービスの作成と配信を可能にする「Liquid Application」、LTEモジュールなどの技術を提供できる。だがIoTで重要なことは、”何を達成したいのか”だ。Nokiaは自動車のIoTで、車の事故の削減を実現したいと考えている。自動車事故で亡くなる人は年50万人といわれている。Nokiaの技術でこの数を減らすことができれば、大きな社会貢献になる。
「IoTは通信事業者に大きなチャンスとなる」とBuvac氏