松岡功の一言もの申す

オラクルはERPクラウドでSAPを追撃できるか

松岡功

2015-08-27 11:58

 日本オラクルが8月26日に開いたSaaS事業戦略に関する記者説明会で、とりわけERPクラウドにおける優位性を強調した。果たして宿敵SAPを追撃することができるか。

オラクルが挙げるERPクラウドの3つの優位性

 「本物のERPをクラウドで提供したい」

 日本オラクル常務執行役員クラウド・アプリケーション事業統括ERP/EPMクラウド統括本部長の桐生卓氏は、記者説明会で幾度もこう強調した。同会見で説明のあったSaaS事業戦略の具体的な内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは桐生氏が語ったERPクラウドの優位性の話が非常に興味深かったので取り上げたい。

 桐生氏が言う「本物のERP」とはどういうことか。同氏は「業務統合性」「データ統合性」「セキュア」の3つのキーワードを挙げ、それぞれ次のように説明した。

 1つ目の業務統合性とは、基幹業務をすべて網羅しているということだ。図に示されているのが、それを表した全体像である。つまりは、一般的にいわれるERPだけでなく、図に示されている広範囲な業務領域までカバーしているのが、「競合他社にないオラクルならではの特長」(桐生氏)というわけだ。


オラクルのERPクラウドの優位性「業務統合性」(出典:日本オラクルの資料)

 さらに、「幅広い業務領域を網羅しているだけでなく、各業務を全体最適に活動させるためのビジネスプロセスも実装しているので、お客様は低価格で短期導入でき、確実に立ち上げていただくことができる」(同)とも付け加えた。

 2つ目のデータ統合性とは、データモデルが単一に統合されているということだ。これにより、「業務とビジネスプロセスが統合でき、ビジネスデータをそのまま分析に活用することができる」(同)という。

 3つ目のセキュアについては、「オラクルは最もセキュアなクラウド環境を自ら提供できる唯一のベンダーだ」(同)と強調。「マルチテナントでなく、お客様ごとにデータベースが分離されているので、完全なセキュリティを実現している」とも説明した。

“容易に連携できる”クラウドサービスが強みに

 桐生氏が挙げたこれら3点は、確かにオラクルのERPクラウドの特長といえる。だが、果たしてERP分野での宿敵SAPと比べて本当に優位なのか。ERPクラウドによってSAPを追撃することができるのか。会見の質疑応答で単刀直入に聞いたところ、日本オラクルでSaaS事業を統括する専務執行役員の下垣典弘氏が、名指しは避けながらも次のように答えた。

 「端的に言えば、クラウドサービス全体として“容易に連携できる”という強みを生かせるのがオラクルの最大の優位点だ。オラクルのERPクラウドの特長として業務統合性やデータ統合性を挙げたが、これらはPaaSによってさらに効率よく展開でき、オンプレミスともシームレスに連携できる。しかもオラクルは、SaaSとして構築したセールス向けやマーケティング向けなどのクラウドサービスもすでに整備しており、それらもすべて容易につなげることができる。これらによって、お客様の多様なニーズに対応するとともに、お客様個々のIT環境の将来に向けたロードマップを提案することもできる。こうした効率性や柔軟性、拡張性といった強みを大いに生かしていきたい」

 ERP分野ではこれまでSAPの後塵を拝してきたオラクルにとって、クラウドサービスへの移行は追撃の大きなチャンスである。関連記事にある通り、大手企業だけでなく中堅・中小企業へもアプローチをさらに広げる中で、どれだけ市場シェアを伸ばすことができるか、注目しておきたい。


記者会見に臨む日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 専務執行役員の下垣典弘氏(左)と
同常務執行役員ERP/EPMクラウド統括本部長の桐生卓氏

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