中国経済に起こっていることを電力消費量から読み解く

ZDNet Japan Staff 2015年08月28日 11時02分

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 8月27日の日経平均は、197円高の1万8574円だった。上がったとはいっても、まだエンジン全開には、ほど遠い状態だ。午前9時10分に433円高の1万8810円をつけた後は、尻すぼみで上昇幅を縮小していった。

 物色の中身を見ても、投資家が慎重姿勢を崩していないことがわかる。上昇率が高かったのは、NTT(9432)やNTTドコモ(9437)、清水建設(1803)、味の素(2802)、日本たばこ産業(2914)、東京海上HLDG(8766)など内需ディフェンシブ株が中心だった。世界景気への不安が残っているので、輸出株は上値が重いままだった。

 投資家が恐れるのは「中国からまだまだ悪材料が出てくるのでないか」という漠然とした不安だ。中国で今、何が起こっているのか。楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏が電力消費量の変化から解説する。

中国のGDPは信用できない

 中国政府が発表したGDP統計では、1~3月も4~6月も前年比7%増。中国政府の目標としている7%成長にぴったり一致している。ところが、この数字を信じる人はほとんどいない。中国景気の現状を知るには、GDP統計ではなく、「電力消費量」「銀行融資」「鉄道輸送量」の変化を見た方がいい(注)と考えられている。

 (注)李克強首相が、首相になる以前に「中国のGDPは信頼性が低い。景気の実態を見るには電力消費量、銀行融資、鉄道輸送量を見た方がいい」と発言したと記録されていることから、この3指標が有名になった。

電力消費量の変化から中国経済の実態が見える

中国のGDP成長率と電力消費量(前年比)の比較:2009年7月~2015年7月


(出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)

 中国のGDP成長率を見ると、2009~2015年は7~10%成長で比較的安定しているようにみえる。ところが、「計画経済はうまくいっている」と、中国政府がアピールするために操作されているとの噂は絶えない。

(1)4兆元の公共投資で景気が過熱していた2009~2010年

 電力消費量の変化を見ると、GDPの変化率とは全く異なる中国経済の姿が見えてくる。リーマンショックの直後、4兆元の公共投資で景気を拡大させた2009~2010年は、GDP統計に表れているより景気は過熱していた可能性がある。

 ところが、この4兆元の公共投資が、鉄鋼生産や不動産開発の過剰投資に回り、中国経済の効率性を大いに損なう結果を生じた。地方には、誰も住まない文字通りのゴーストタウンが林立している。

(2)景気にブレーキがかかった2012年

 過剰投資にブレーキをかけた結果、2012年には、中国の景気実態は、GDP成長率に表れているよりも悪化していたと考えられる。この時、李克強首相は、不退転の覚悟で非効率な投資を一掃し、経済の構造改革を進める覚悟をしていたと考えられている。

(3)再び投資を拡大させた2013年

 ところが、中国は景気が悪化すると、共産党独裁への批判が高まるリスクを抱えている。2013年には再び公共投資を増やして、景気を支えたと考えられる。

(4)公共投資で高成長を維持することが限界になってきた2014~2015年

 ただし、非効率な投資を拡大させると、後からそのしっぺ返しが来るものだ。2014~2015年には、過剰投資の問題が自動車生産などさまざまな分野で広がってきたことから、投資によって無理に高成長を維持することができなくなってきたと考えられる。

 中国政府は、そこで上海株を上昇させ、株高効果によって高成長を維持しようと図ったと考えられる。2014年10月から、中国政府の市場介入が奏功して、上海株は急騰した。ところが、中国景気の実態悪化が続き、人為的に吊り上げられた上海株は、2015年6月から急落した。

上海総合株価指数の動き:2013年1月~2015年8月27日


(出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成)

日本株は買い場の判断を継続

 中国経済への不安は簡単には払拭されそうにない。日経平均が本格的な反発相場に入るまでに、まだ時間がかかりそうだが、窪田氏は今は日本株の良い買い場になるだろうと話す。

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