展望2020年のIT企業

AI活用に新たな成長の活路を見出す - (page 2)

田中克己

2015-09-15 07:00

SaaS商品の品ぞろえ強化

 サイオスは、SIOS iQのような使用量に応じて支払う課金モデルのSaaSの品ぞろえを推し進めている。目下のところ、SIOS iQのほかにワークフローや放送局向け楽曲著作権管理などがある。基本的には、グーグルなど大手IT企業が参入しづらい市場規模の小さな業種・業務SaaSを狙う。業種・業務システムの構築を展開する多くのIT企業が、「(クラウドサービスは)カニバライになる」(喜多社長)ので、手がけづらい分野でもある。

 定食レストラン「やよい軒」や持ち帰り弁当「ほっともっと」を展開するプレナスと15年5月に設立した合弁会社も、品ぞろえの一環でもある。合弁会社は海外における外食ビジネスの業務システムを担う一方、サイオスはそこから得たノウハウをベースに外食産業向けSaaSを開発する。

 もう1つが、4月に買収を発表した社員約130人のシステム開発会社キーポート・ソリューションズにある。金融系に強い同社がグループに加わったことで、金融系SaaSが視野に入ったという。

 加えて、機械学習などAIを搭載し、「機械が機械を管理する時代の先駆者になる」(同)。そのため、データサイエンティストやソフトウエアアーキテクトなどサービス商品の開発に必要な技術者の獲得に力を入れる。

 SIOS iQの開発を担当した米国現地法人には多数のデータサイエンティストがいるし、キーポートには、UI(ユーザーインターフェイス)/UX(ユーザーエクスペリエンス)を重視したシステム開発の経験を積んだ技術者がいる。

 研究開発費も13年度の約3億円から14年度に5億円超、今期(15年12月期)はさらなる増額をする。結果、今期の売り上げは約20%増の88億円を見込んでいるものの、約3億円の損失を計画している。だが、「AIなどの活用によって、データをユーザーに役立つものにする」。サイオスは5年後、10年後にそんなサービスの提供を目指しているようだ。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

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