近年では、今後はモバイルアプリの時代になると思われており、IT業界の人材も、従来のサーバやPC向けのアプリケーションから、モバイルアプリにシフトしつつあると思い込んでいる人が多いのではないだろうか。そして、モバイルアプリの多くは、制作も導入も簡単だと考えられている。しかし現実の状況は、その想像とはかなり違っている。
3000人のITプロフェッショナルを対象とした新たな調査によれば、多くの開発者はモバイルアプリ開発に関わったことがなく、その経験がある人も、リソース不足やプロセスの不確実さ、変わりやすいマーケット需要などを原因とする遅れに苦しんでいる。また、ユーザーエクスペリエンス(UX)はモバイル開発でもっとも重要な要素の1つであり、成功を妨げる要因でもあることが明らかになった。
これらは、モバイル開発環境を手掛けるTelerikが行った調査の一端に過ぎない。この調査では、ITプロフェッショナルの大半(57%)がモバイルアプリ開発には1度も関わったことがないと回答しており、モバイルアプリ開発は現在でも極めて専門的な業務であることが分かった。
モバイルアプリの開発経験がある開発者の47%は、機能するアプリを平均で1年に1つしか作っていない。中には、最近はまったく作っていないという人もいる。
プロセスが定まっていないことが問題になる場合もある。調査対象のモバイル開発者は、モバイル独自の制約や、テクノロジや開発慣行の変化にフラストレーションを感じている(16%)。それに加え、それらの開発者は時間不足(19%)、ツール不足(15%)、予算上の制約など、さまざまな阻害要因に苦しめられている。
また多くの開発者は、あらゆる種類のモバイルアプリ開発について(一般ユーザー向けのもの、基幹業務で使われるものを問わず)、UXがもっとも重要な要素だと考えている。調査対象の44%が開発するアプリでもっとも重要なのはユーザー体験であると回答しており、メンテナンスのしやすさ(24%)、性能(15%)、セキュリティ(11%)がそれに続く。
プラットフォームについては、もっとも好まれるのはハイブリッド(33%)であり、続いてネイティブ(25%)、ウェブ(19%)だった。モバイル開発者の76%がAndroid向けに開発していると回答しており、iOSは63%、Windows Phoneは40%だった。iOSで開発を行っている人のうち、83%がAndroidでも開発を行っている。多くのB2B、B2Eモバイルアプリではマルチプラットフォーム開発が必要不可欠だが、このことは最大の課題でもある。回答者の36%が、アプリ開発プロセスの中でもっとも大きな課題にマルチプラットフォーム開発を挙げており、クリーンなUIの提供とほぼ並んだ。
今後について、回答者はモバイル以外にもさまざまなプラットフォームで開発していくとしており、これにはウェブ(87%)、デスクトップ(62%)、IoT(22%)、ウェアラブル(6%)などが含まれる。
2015年中にウェアラブルデバイス向けのアプリを開発する確実な計画があるのは、調査対象の21%だけだった。その21%のうち、45%が「Apple Watch」向けのアプリを開発するとしている。
この調査の回答者の構成は、開発者(49%)、最高経営責任者・企業オーナー(14%)、アーキテクト(14%)、ITプロフェッショナル(8%)、最高技術責任者(6%)などから成っている。回答者の47%がソフトウェア会社またはISVに所属しており、33%が非ソフトウェア企業(大企業・中小企業)、20%がシステムインテグレーターに所属している。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。