連想型高速インメモリBIプラットフォーム「QlikView」の開発元として知られる米Qlik。同社が新たに発表した製品やサービスは、形態でみれば企業向けBI基盤から個人向けパブリッククラウドサービスまで、機能でみればデータソースそのものからレポーティング機能までと実に幅広い。
この新たな展開と、その背景となる戦略について、同社グローバルプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントを務めるJames Fischer氏に聞いた。
データロード機能にも独自の連想技術を適用
まず、主力製品の一翼を担うプラットフォーム型BI「Qlik Sense Enterprise」の新版「2.0」。ビジュアライゼーションやアナリティクス、ダッシュボードなどの機能を備えたBIプラットフォーム製品の、メジャーアップグレードだ。今回はセルフサービスでデータを用意できる機能を拡充したほか、後述するNPrintingの技術も取り入れてレポート出力が強化されているという。
Qlik VP, Global Product Marketing James Fisher氏
「Qlik SenseはQlikのビジョンを表すプラットフォーム。年3回リリースの約束をしており、今回もその1つですが、大きなイノベーションをもたらす重要なリリースと位置付けています」とFisher氏は言う。
新版では、分析のみならずデータ取り込み段階においても、同社独自の「連想技術」を生かした点が大きな特徴となっている。その新機能は「スマートデータロード」と呼ばれ、追加しようとしているデータの中身を確認し、既存データのどこに合致するのかを自動的に判断するというもの。
同氏は製品のデモで、商品の売り上げに関するデータを取り込む際、追加しようとしたソースにある「Name」という項目の内容が、既存データソースの「Product」という項目の内容に一致するとシステムが判断し、ユーザーに確認した上で双方のデータソースを組み合わせて分析する様子を見せてくれた。
「ずっとマーケティングやコンサルティングを手掛けてきた、IT畑の出身でない自分のようなユーザーでもデモできるほどの簡単さが、スマートデータロードの特徴。そういったユーザーでも、整理されていないデータや全く関連していないテーブルも気にすることなく、Qlik Senseが自動的に関連性を判断して取り込んでくれるので、セルフサービスで何百というデータソースから自在にデータを持ってこられます。これが、他社にはできない、連想技術の強みです」(Fisher氏)
この機能は、ユーザーにとって分析の自由度を大きく高めることができるものだ。例えば商品を独自基準で分類して分析したいといった場合にも、Excelでカテゴリ表を自作し、スマートデータロード機能で取り込むことで、すでに持っている商品データに独自のカテゴリ分類を適用することが可能だ。
連想技術の活用イメージ
レポーティング機能も強化
Qlik Sense Enterprise 2.0では、レポーティング機能も強化した。Qlikは、以前から同社のテクノロジーパートナーとしてQlikView向けレポーティングツール「NPrinting」を開発してきたVizubiを2月に買収しており、Qlik製品群のレポーティング機能として展開を進めている。NPrintingは見栄えの良いレポートを、PDFやOfficeドキュメント、HTMLなどの各種形式で出力でき、Qlik製品群と同じく簡単な操作で定型レポートなどを設定することが可能。
特に日本では、BIツールを動的な分析だけでなく、静的なレポートのためのツールとして利用するユーザーが少なくない。同社が当初から推し進めているセルフサービスのデータ分析、ビジュアライゼーションに、この定型レポート機能を加えることで、幅広いユーザーニーズに対応していくことが可能となる。
「トラディショナルなレポートはスキルセットの面で誰でも理解できるもの。多くのユーザーが、レポート配布、共有も今まで通り実施したいと考えています。一方で、ビジュアライゼーションツールはビジネスにアジリティをもたらすもので、この両方を共通プラットフォーム、共通データで提供できるようにすることは大きな意味を持つのです」(Fisher氏)
トラディショナルなレポート、すなわち管理帳票などは、古くから基幹系システムのデータを成型して定期的に出力され、活用されてきた。元データが基幹系にあることから、企業としてのデータガバナンスは問題ない。
一方、エンドユーザーが随時セルフサービスで行う分析やビジュアライゼーション、およびそれを元にしたレポートでは、データソースの自由度が高い反面、そのガバナンスに不安が生じる。Qlik Sense Enterpriseでは、どちらの使い方にも対応できるというだけでなく、データソースから出力まで一貫したフレームワークで統制し、どのような使い方でもガバナンスを効かせられるようになるという。