米データセンター大手のEquinixの日本法人であるエクイニクス・ジャパンは9月8日、株式公開買い付け(TOB)によるビットアイル買収を発表し、市場から大きな注目を集めた。ビットアイルの買収完了により、エクイニクスは国内データセンター事業者の中で第4位の規模になるという。
今後、主要データセンター事業者による買収合戦が加速すれば、規模の経済が大きく働く市場となり、今後さらに競争が激化することになるだろう。データセンター市場は今後も成長が見込まれている。IDC Japanが2014年10月1日に公表した「国内データセンターサービス市場予測」によると、2014年の市場規模は、前年比成長率8.2%の9682億円、2018年の市場規模は1兆2315億円と予測している。
出所:IDC Japan 「国内データセンターサービス市場 事業者種類別 売上額予測」2013~2018年 2014.10
国内のデータセンター市場は、クラウド市場の成長は見込まれるものの、自社のシステム環境であるオンプレミス環境からデータセンターへの移行案件は減少し、仮想化などのテクノロジの進展により利用ラック数も鈍化もしくは減少していくとみられ、データセンターの供給過剰もここ数年で顕在化する可能性も考えられる。そのため、データセンター事業は、今回の買収のように、再編が進むことは充分に考えられる。
2020年の東京五輪開催に伴い、建設業界の人出不足は深刻な状況で建設費のコストも増大している。国立競技場を建設するだけでも膨大な人と可動が必要となり、データセンター建設どころではなくなるかもしれない。さらに、電力コストの上昇や、データセンターのコモディティ化による価格競争が加速することで、データセンターの建設コストの収支構造が厳しくなると考えられる。
データセンターの老朽化の課題も顕在化しており、建設してから20年以上たった一部のデータセンターの廃棄化も始まっている。十数年以上前に建設されたデータセンターと最新のデータセンターと比較した場合、データセンターのエネルギー効率を表す指標である、施設の全体の消費電力をIT関連機器の消費電力で割った値“電力使用効率(PUE)”は大きな差がある。電力料金が負荷となるなど、収益性の低下も懸念されるとともに、ユーザーの確保や維持も難しくなるだろう。
国内におけるデータセンターは競争環境も激化しており、これまで以上にサービスの付加価値による差別化や、規模の経済を生かしたコスト競争力が生き残りの鍵となっている。さらに、今回のエクイニクスの買収などにもあるように、グローバルなデータセンター事業者とも戦っていく必要がある。
Equinixは、世界のデータセンター市場シェアで1位となっており、日本国内では、金融関連企業やクラウドサービス事業者、コンテンツプロバイダーからの高い需要を背景に、2016年第1四半期には東京都内に5番目の新たなデータセンター「TY5」の稼働を予定している。