2番目の「オンディマンド・サービスの普及」云々というのは、ひと言でいえば「シェアリング経済」に関係しそうな社会の流れのことで、具体的にはUberやその競合相手であるDidi Kuaidiなどの配車サービス、アプリ提供元が絡む話を指している。
Evansは「地域ごとの事情によって、変化の度合いはさまざまに異なるだろうが」などと前置きしつつ、「自分では自動車を持たない人々が増えるのに伴って、売れるクルマのタイプも当然変わってくる」「現在のUberなどは、ドライバー個人が所有する自動車を使ってサービスしているが、この用途の場合はたとえばGE Capitalのような資本力があるところが車輌を所有するほうがより合理的かもしれない」「そうした法人が買い手の大半を占めた場合、売れる自動車はやはり価格と機能重視のもの――PCでいえばDellやHPの製品に相当するものになる可能性も高い」「そうなれば、AppleやTeslaは苦戦するのではないか」などと記している。
3番目のロボットカー実現の波及効果に関する話は、2番目の点を受けたもので、この変化により「誰が、どんな理由で、自動車を買うか」が大きく変わる可能性があるとEvansはまず指摘。さらに具体的な影響としては、ロボットカーによるオンデマンドサービスだとドライバーの人件費がかからず、自動車保険のコストも下がる(安全性が高まると仮定して)。また所有する車輌を又貸しする個人も出てきそうだから、自ずとオンデマンドサービスに使われる車輌の供給が増え、結果的に料金はさらに下がる、といったことが挙げられている。
この場合の「又貸し」というのは、自動車の所有者が自分(たち)の使わない間は、車輌をオンデマンドサービスに提供してほかの利用者に使わせる(金銭を稼ぐ)といったことだ。
人間という不合理な生き物が絡む話でもあり、実際にどうなるかはそれこそ「フタを開けてみるまでわからない」ことだろうが、可能性としては面白い話と思える。
なお、私の家の近所にもほぼ週末にしか乗らない自家用車をキープしている家庭が何軒がある。「不合理」云々というのはそうした点を差してのことだが、そのほかに「(金銭と交換で)自分の空間を一時的にもアカの他人に明け渡すことに心理的な抵抗を覚える人もいるのではないか」といった個人的な疑問――要は「単純なソロバン勘定だけでは動かない人がどれほどいるのか、いないかのか」といった疑問とも関係している。
さて。波及効果の話のなかでもっとも面白いのは、ロボットカーによるオンデマンドサービスが普及した場合、人の動き(流れ)が大きく変わる可能性がある、という部分。たとえば、交通渋滞の苦労や駐車スペース探しの面倒から解放された人間が、いまよりももっと街中に出かけるようになる(同時に、広い駐車場を抱えた郊外のショッピングモールのような施設のアドバンテージが小さくなる)。
街中の駐車スペースも少なくて済む(ロボットカーは、ドライバーあるいはほかの利用者を下ろした後自分で別の場所に移動するので、長時間の路上駐車などなくなる、それで渋滞もさらに起こりにくくなる)。さらに、ロボットカーが事故を起こさない(少なくとも起こしにくい)という前提で、「道路がいまより安全になれば、逆説的に自転車に乗る人も増えるかもしれない」といったこともEvansは述べている(*6)。
Evansの文章はこの後もさらに続いていて、そのなかでたとえば「ロボットカー単体での安全性向上」「交通=自動車のトラフィックの最適化」「ロボットカー車輌全体の利用率最大化」といった技術的な側面に触れている。この続きについては次回にもう少し記すことにする。