米ZDNet編集長Larryの独り言

セールスフォースはCRMを超えて「企業のフロントエンド」に--Dreamforce 2015総括 - (page 2)

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2015-09-18 06:15

 リレーションシップOSという筆者の概念を聞いたSalesforce上級幹部陣の反応は興味深いものだった。SalesforceのIoTクラウドインフラストラクチャを主導するAdam Bosworth氏は、CRMは変わり続けているが、この用語は現在、より広範な市場に当てはまるようになっており、よりインテリジェントかつ自動化されたものになりつつあると述べている。RelateIQの最高経営責任者(CEO)で、現在はSalesforceIQを統括するSteve Loughlin氏は、組み込み型のインテリジェンスと関係性のマッピングはこの概念にとって極めて重要であるという。Salesforceの製品担当プレジデントを務めるAlex Dayon氏は、CRMが「記録のシステム」から「エンゲージメントのシステム、インテリジェンスのシステムへと」移行していると語った。CRMは急速に進化している、というのが彼らの共通の認識だ。

 Dayon氏とLoughlin氏はリレーションシップOSという概念を気に入ったようだった。残念ながら、今後数年間のロードマップを打ち明けてくれる人はいなかった。筆者の見解はこうだ。SalesforceがCRMのさらなる再定義を試みても、驚いてはいけない。筆者にとって明白なのは、Salesforceがユーザーのビジネスとデータ、関係性、そしてインテリジェンスをつなぐ結合組織になろうとしている、ということだ。少なくとも、Salesforceはユーザーのビジネスにとってのユーザーインターフェースになることを望んでいる。

「Salesforce」の社名を変えるべき時が来た?

 企業とリレーションシップマネジメントシステムをつなぐ、最適なビジネス結合組織になることを真剣に目指しているのなら、Salesforceはさまざまな問題に直面するだろう。

 第一に、Salesforceは拡大を進める中で、専門性の高い企業と競合するはずだ。例えばWorkdayは、人事と財務は相性がよく、アナリティクスとデータサイエンスを組み込めばビジネスOSとしての役目を果たすと主張する。SalesforceはWorkdayと連携しているが、人事分野にも取り組んでおり、ユーザーインターフェースとして前面に出ようとしている。Analytics CloudはSalesforceの認知と利用を拡大するが、開発には時間がかかるだろう。IoTでは、Salesforceは多くのプレーヤーと競合するはずだ。しかし、データを容易に取り出せれば、うまくやっていける可能性もある。

 しかし、Salesforceが直面する最大の問題は、これまでの同社のアイデンティティかもしれない。Salesforceは営業とサービスのOSとして知られている。Salesforceの本質はCRMだ。CRMは同社の株式銘柄コードでもある。同社がそれほどCRMに注力している事実は、競合他社が、Salesforceには重要な技術の要素が欠けていると主張する材料にもなりかねない。

 SAPのプラットフォームソリューションズグループのグローバルプレジデントを務めるSteve Lucas氏は、同社が新しいCRMツールを発表した際、インタビューでその主張を試みた。CRMはコマース、エンゲージメント、バックエンドシステムと統合されなければならない、というのがCRMの改革に対するSAPの見解だ。奇しくもSAPが財務システムとバックエンドシステムを手がけているのは、意外なことではない。Lucas氏は、「Salesforceは世界を見る視野が狭い。関係を管理したいのか、それとも、真のエンゲージメントを中心に据えたいのか。カテゴリ全体が進化する必要がある」と述べている。

 誰に促されるでもなく、Lucas氏は、Salesforceの株式銘柄コードが示すのは同社の視野の狭さだと述べた。CRMのような銘柄記号が実際に不利な要素になるかどうかは不明だが、Salesforceのライバルがそこを突いてくるのは確実だ。

 将来のある時点で、社名が変更される可能性もある。Salesforceの本質は営業だけに留まらないと、同社はそれとなく述べてきた。結局のところ、Salesforceは自らを「Customer Success Platform」(顧客に成功をもたらすプラットフォーム)として売り込んでいる。初期の頃、Salesforceは、ソフトウェアを捨ててクラウド配信モデルに移行することを重視していた。Salesforceが基本計画をうまく達成し、フロントエンドでより多くのビジネスを行う限り、社名は重要ではないのかもしれない。そのようなブランド資産価値を築き上げてきた企業がそれを捨てなければいけない、と考えるのは異端の主張である。その反面、RelationshipIQがいつの日かSalesforceの新社名の選択肢になる可能性もある。社名が変更される場合、新しい名前は同社が実際に目指している組織をより適切に反映したものになるだろう。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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