ハイブリッドクラウド座談会--企業ITの行き先を徹底討論する - (page 4)

怒賀新也 (編集部) 山田竜司 (編集部) 吉澤亨史

2015-09-17 08:23

ZDNet Japan それぞれが持つ解決策の方向性を教えてください。

IBM 紫関氏 日本IBMの一番の特徴は、オープンテクノロジベースのクラウドであるということです。例えば、IaaSではOpenStackを使ってますし、PaaSであればCloud Foundryもあります。この2つはクラウド業界の中でもかなり勢いがあり、財団もできているなど、単にオープンソースというだけではなく、ガバナンスもオープンになっているという(ベンダーロックインのない)非常に健全なクラウドだと思います。

 また、IaaSに関しては、これまでのIaaSは仮想マシンをベースにすることが「お約束」でしたが、ハイパフォーマンスコンピューティングやゲームのエリアでは、仮想化したくないというニーズもあります。そこで、私たちはIaaSにおいて、ベアメタル(サーバ)を提供できて、しかもそのプライベートのネットワークが、海をまたいでデータの従量課金なしに使えることを特徴として打ち出しています。

 PaaSに関してはCloud Foundryベースですが、これはデベロッパーのためのPaaSなのでユーザビリティの良さを重視しています。また、アプリケーションが早く作れるということは、単にPaaSで実行環境があるだけではダメで、そのアプリケーションがつなぐことのできるいろいろなサービスが充実していることが非常に大事です。そのためわれわれは、ビジネスパートナーへのサービスも含めて、今現在も約100個のサービスを準備していますし、これからも拡大していこうと考えています。

座談会は朝日インタラクティブ会議室で開催。議論は熱く盛り上がった。
座談会は朝日インタラクティブ会議室で開催。議論は熱く盛り上がった。

NTT Com 林氏 NTT Comは通信事業者ですので、基本的にはその強みを生かしたクラウドサービスを提供しています。基本的に通信事業者は、ユーティリティサービスを提供して、それにスケールメリットを生かしたサービスの展開能力をもともと持っていますので、そこをさらに強化しています。また、クラウドのデータセンターやネットワークをグローバルへと展開することにも注力しています。

 オープンな技術を使ったエコシステムも展開したいと思ってます。今後はベアメタルやプライベートクラウドも重要になってきます。さらに、通信事業者として10Gのバックボーンの利点を生かした展開もしていきたいですね。

オラクル 佐藤氏 オラクルは、基本的なPaaS以下のレイヤは他のベンダーより後発であるものの、豊富な技術を培っています。基本的ところでは、データベース専用機「Oracle Exadata」のようなものを作って、オンプレミスのハイトランザクション環境を良くするといったことをしています。さらに、それをパブリッククラウドでも同様に使えるようにするのが基本戦略です。

 つまり、オンプレミスでオフプレミスでも、同じ規模で、同じトランザクション量を同じ構成で動かせるようにすることを目指しています。パブリッククラウドでも、その選択肢を取れるようになったのがポイントです。

マイクロソフト 各務氏 マイクロソフトはモバイルとクラウドの会社ということで、エンドツーエンドで実装することに力を入れています。Windowsの端末だけでなく、Android端末、iPhone/iPadも含めて実装することを意味します。その中で、クラウドにまつわるところでアプリケーションとデータセンター向けの取り組みを徹底的に実施する。それはみなさんと同じだと思います。

 その中で、マイクロソフトの特徴は、全方位ということです。NTT Comとわれわれ、さらにパートナーを加え、ホステッドクラウドを使ってシステムを提供することがあります。すべての運用管理データをトグル(異なるベンダー間の状態を交互に反転するような処理)して、それを分析して、運用管理するという取り組みも始めています。

 さらに、クラウドで最も重要な要件はセキュリティです。その取り組みの一環として、日本にもサイバークライムセンターを開設しました。マイクロソフトは(被害実績から考えて)世界で2番目にサイバー攻撃を受けている企業ですので、そのデータを基に、いかにセキュアなバックボーンを作るのかということをテーマにしています。

 最終的に、顧客に堅めのクラウドサービスを提供できたら、次にポイントになっていくのがサービスパックです。マイクロソフトには「Office 365」という強力だと自負しているSaaSがありますし、パートナーのSaaSもあります。

 SaaS、IaaS、PaaSを含め、顧客のニーズに応じてSLA、機能、リアルホスト、あとはセキュリティレベルを選んでもらい、提供していく――これが「全方位」の意図です。

 第2回に続く。

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