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「PCのデル」後の舵取り--デル新社長の平手氏 - (page 4)

末岡洋子 怒賀新也 (編集部)

2015-09-24 19:12

--優先課題は?

 まず社内から話しますと、Dellの社員は元気で、顧客の方にしっかり目を向けて頑張ってくれています。これをさらにもっと元気にしていきたい。次に、Dellの元気な社員が提供している価値を加速させます。製品単独の価値、顧客起点で業務上のニーズにきちんと応じる提案をプロアクティブに行っていきます。

 顧客からさまざまな製品の引き合いを頂戴したとき、その顧客は市場の変化に置かれ、特定のプロジェクトが必要と感じているわけですが、それに対してわれわれが提供できる価値は何なのか――HowとWhatの2つがあります。顧客からこういう製品はあるか、と聞かれたときはHowが決まっている時です。Howの中ではこういうやり方があると提案する、これは今後も継続します。

 Whatでは、顧客がなぜ新しい取り組みをするのか、どういう緊迫感でどのぐらいの振れ幅があるのかなどの全体感を深いレベルでの対話を通じて把握し、顧客のやらなければならないこと――Whatの部分の理解を深めていきたい。

 Whatを山の頂上に例えると、山がたくさんある中で顧客が今この山の頂上(What)に登る必要があるのはなぜなのか。業務上のニーズだったり、さまざまな技術の変化やイノベーションだったりと背景があり、顧客が実現しなければならないことは、この山の頂上にあるということを理解します。

「日本の顧客に恩返ししたい」と話す
「日本の顧客に恩返ししたい」と話す

 その次にHowへと進めます。顧客が南ルートからという場合、そこにも何種類かあります。われわれがどの山になぜ登りたいかということをきちんと理解していれば、南ルートだけではなく、北ルートもあるかもしれない、と提案できます。

 このように、顧客の要望に対して積極的に提案するということに加え、もう少し大きく理解して、それに対してさらに大きな選択肢を顧客に提供するというようなことをやっていきます。

--これらの優先課題を実現するために、社内の教育や人材の採用の方向性も変わってくるか?

 まずは、月並みかもしれませんがチームワークが大切です。それぞれの部門が一生懸命やる。さきほどの山の登りの例であれば、南ルート1つとっても、サーバ事業部での解決策があり、クライアント事業部での解決策があり、ソフトウェアでの解決策もあるでしょう。

 どれも正解ですが、事業グループがもっと会話をして、顧客が本当に要望している姿――Whatの部分を理解することによって、統合したり、あるいはこれよりも他のルートの方がメリットの高いソリューションになると提案するといったことが可能になります。

 やり方はいくらでもあり、組み合わせは無限にありますが、その中で最善のものを提供するために一層チームワークを鍛えていきたい。弊社の中だけではダメで、パートナー企業の力や知恵を借りてやっていきたいと考えています。

--IBMでの経験をどのように生かしていくのか

 IBM時代、とても良い勉強となったのは(食品メーカー)NabiscoからやってきたLouis Gerstnerの存在です。Gerstnerはユーザー部門を代表し、経営の舵を取りました。テクノロジのリサーチラボからセールスまで、イノベーション価値を徹底的に求め、それがIBM復活につながりました。製品主導だった巨大企業が、顧客が必要としているものに対するイノベーション価値を徹底的に追及する企業へと変身を遂げたのです。

 実はGerstnerとDellには共通点があります。DellもPCを改良して顧客の価値を高めていったDNAを持っています。バックグラウンドはテクノロジですが、行き着くところは同じで、顧客への提供価値として、革新的でありながら現実的なイノベーションとしての提供価値をどうやって作るかというところを常に考えています。

 IBMの経験を活用して、Dell日本法人の社長としてテクノロジを起点としつつ、そこで終わらず、現実的なイノベーションを顧客に提供するという経営価値観でやっていきたい。お世話になった日本の市場の顧客に微力ながら、全力で恩返しをしたいと思っています。

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